今日も秋のとろりとした空気がかぐわしく、瑠璃色の空が目にしみる。親父と俺はいま、誰もいない家の縁甲に座っている。
「″見える人″ってやっぱりいるんだな。お盆のあの日にさ、俺がナガオの後ろを歩いてるのに気づいた職員さんもいたけど、『いま、泥のでっけえ化け物が、ツマ子さんの背中を押したあ!』と叫んでる利用者さんもいたぜ。なあ、親父、霊でも疲れることぐらいあるんだから、あまり無理をするなよ。」
と、俺は親父の瞳孔の見えない昏い瞳を見て言った。
親父の白内障は進行しないが、治りもしない。親父自身が天国に行って神様に名前を呼ばれるまで、ワスレナグサのような色のこの輪っかはずっと親父の眼の中にいるのだろう。
先月のお盆の中日の朝(8月14日)、ツマ子の施設の周辺には、砂だの枯れ葉だのカエルや虫の死骸がどっさり落ちていた。また、ツマ子が病院に運ばれた後、あいつはベッドの上で、「便所コオロギが、ハエが、ゴキブリが、カメムシがうじゃうじゃいる!」とわめいていた。あいつの病室は東病棟の5階にあったが、実際に窓の外一面に虫どもが隙間なく張りついて、気持ち悪い程だったらしい。それは、俺からあいつへの「プレゼント」だ。親父と俺がやったことはただの腹いせに終わった。しかし、俺たちの「死力」を尽くしたイタズラは、手術後のツマ子を大いに苦しめたようだ。
ナガオは確かに、
「お義父さん、許してつかぁさい。憂一さん、許してつかぁさい。」
と、ツマ子が泣きながらうわ言を言うのを聞いたという。























沈丁花です。新作の執筆に行き詰まり、前回の作品を読んでいたら、アナザーエンドが出来てしまいました。″デルタ″には「違い」「変化」という意味があります。
沈丁花です。このお話の前半部分は、原作とあまり変わりません。後半部に新たに肉付けし、違う終わり方にしました。