2025年某日。我々取材班(角見D(俺)・関宮AD・STF見代塚&綿岸・CAM(カメラマン)戸崎)はとある五十代女性の体験者に話を聞きに行く事になった。体験者は、現在も見代塚区域内に住んでいるという。
「あ、あれ、角見Dが言ってた結界石じゃないっすか?」
車の中から見代塚が外を指差す。取材までまだ少し時間がある為、一度我々は車から出た。
「何か書いてあるっすよ」
結界石をよく見ると文字が彫られているのが判ったが、殆どが削れたか汚れたかで解読は出来なかった。戸崎は、カメラでその結界石をしっかりと撮影した。
「よし、もういいだろう。車に戻れ」
車に乗り、体験者の家へと進んでいった。
「ピンポーン」
家に着き、呼び鈴を押す。すると家の中からトタトタと足音が聞こえ、玄関が開く。
「は〜い!」
「あの、取材を申し込んだ『凸撃!心霊事件の真相』の角見と申します」
「あ、取材の方ですね!どうぞどうぞ!」
体験者・片ノ葉(かたのは)さんは、明るく我々を家に招き入れてくれた。
「あ、お茶入れますね!」
「ああ、全然お構いなく」
片ノ葉さんは、我々に和菓子まで出してくれた。
「えーっと、じゃあ本題に入るのですが…」
「あ、はい!あれはねぇ、まだ娘が生まれる前の話です。確か…」
片ノ葉さんは、結婚を機にこの見代塚区域内の一軒家を買い、住む事になったそうだ。見代塚区域内はそもそもマンション・アパートが多く一軒家が少ないのだが、偶々二階建ての一軒家が一つだけ空いており、内見した時直感的に「ここがいい」と夫婦二人して思ったそうだ。それからすぐに契約書に記名したという。
暫く住んでいたある日。夕飯を食べている時、箸が勝手に転げ落ちるという現象が起こった。数日そういう事が続くので、転げ落ちないように予め箸を持ったりしてみたのだが、何故か持っている時は手を弾かれるようにして落ちてしまった。
「それでねぇ、何で落ちるんだろうって思って、私近くにある図書館へ調べに行ったんですよ!そしたらこの区域にとある風習がある事が判りまして」
「風習、ですか?」
「そうなんです!実はこの見代塚区域では、『子供が七歳になる時、親の血を付けた箸で食事させる』という風習があるんです。」
四
かつてこの区域では、子供が亡くなる事故が後を経たなかった。それは全て七つになった直後であった。だから、この区域では七つになる子供に親の血を付けた箸で食事させるという風習が出来た。こうする事で初めて、子供はちゃんと肉体を持ち、人間になれるのだと。
「…どうしてこんな風習があると判ってるのに、まだここに住んでるんすか?」
顔を顰(しか)めた見代塚が片ノ葉さんに問う。
「その後判ったんです!この区域、この風習を守れば他の所より子供の亡くなる事故が少ないんです!それもこの区域に住んでいた亡くなった子供はぎりぎりこの区域の外での事故なんです。つまり、風習さえ守ればここはとても安全な所なんですよ!」
片ノ葉さんはとても熱心に、楽しそうに話していた。
「…あの、そろそろ暗くなるので、今回の取材はここ迄(まで)にさせて頂きま」
「ああ!暗いと危ないですし、この近く飲食店が少ないので夕飯食べてってください!」
片ノ葉さんは我々に夕飯までご馳走させてくれた。
「こんなにいいんですか?ありがとうございます。」
「いえいえ!今はもう離婚して夫は居ないし、子供は独立して一人暮らししていて毎日一人なんですよ!久し振りに誰かにご馳走できるのが嬉しくて!沢山食べてくださいね!」
片ノ葉さんの料理はどれも美味だった。ただ、関宮が食べる直前、顔を青ざめているのは気掛かりだったが。
食事を終えると、我々は片ノ葉さんに礼を伝え帰る事にした。
「こんな時間だから泊まっていってもよかったのに」
「ああいえ、まだ我々は仕事が残っているので…」
「あ、そうだ!リビングと二階の部屋に監視カメラ設置しませんか?」
「え?」
「私、昔こういう番組のスタッフやってた時期があるんですよ!監視カメラで夜中の映像を撮っておいた方が、何かと便利でしょう?」
「あ、そうなんですね。じゃあお言葉に甘えて…」
片ノ葉さんの家は一階に広いリビングとキッチン、吹き抜けの折り返し(U字)階段を上がってすぐの右側にベランダの扉、もう少し奥へ行った右側に寝室、その寝室の右側には襖(ふすま)があり開くと六畳程の和室がある。
監視カメラを設置するのはこの一階のリビングと、二階の和室にする事になった。
「和室はほぼ物置なんで汚くてすみませんね」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「寧(むし)ろ、これくらいの方が雰囲気が出て丁度いいですよぉ」
綿岸と関宮が片ノ葉さんと会話しているのを聞きながら、俺と戸崎でカメラを設置した。
「カメラ、設置出来ました。」
「あ、出来ましたか!ありがとうございます。実は昔からこういうの憧れてたんですよね!」
カメラを設置し終え、我々は片ノ葉さんの家を後にした。
「…そういえば関宮、夕飯食う時顔色悪かった様だが大丈夫か?」
「…えぇ?角見D気付かなかったんですかぁ?」
「はぁ?何にだ?」
「片ノ葉さん家のお箸、全部『赤』かったんですよぉ?」


























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