六
私には句里という三歳年下の弟が居る。私の弟は箸が持てない。年齢的な物ではなく、そういう病気だとお医者さんが言っていた。
ある日、私の同級生の友達三人が家に遊びにきた。その日は私の家でお泊まり会だった。
夕飯は私の家族と一緒に食べるのだが、その時に事件が起きた。
「え、句里君お箸使えないの?」
母親に食べさせてもらっている句里を、友達三人は気持ち悪がったのだ。この村では大体の子供が三歳くらいで箸が使えるようになるからだろう。私は許せなかった。いくら四歳の子供が箸を使えないからって、わざわざ言葉に出さなくていいんだから。
食事を終えるとすぐ、私は友達を家から追い出した。もう外は暗かったけど、それでもあんな奴と一緒に寝るのは嫌だった。
けれど私はそれでも腹の虫が治らなかった。その時、食事を終えた直後でたまたま箸を持っていた。私は箸を持ったまま外へ出た。そして音を立てぬよう忍足で近付いた。三人に追いついた時、私は一番最初に弟を揶揄(からか)った友達を後ろへぐいっ、と引っ張った。友達は後ろに仰向けになる形で倒れる。すると私の目の前に彼女の顔が来るのだ。私はその眼球に思いっきり箸を振り被った。
「きゃあぁぁぁ!」
甲高(かんだか)い声で友達三人は叫ぶ。田舎なもんで、夜は人っ子一人居ない。私は箸を抜き、また刺し、何度も何度も刺した。多分脳まで届いていたと思う。
暫くすると、眼球に箸を突き刺した友達は動かなくなった。だから私は腰を抜かしているもう二人の友達も同じようにした。まぁ、もう友達じゃなかったけどね。
全てが終わった後、私は死体と折れた箸を近くの沼に投げて、川で服についた血を洗って家に帰った。「どこに行ってたの」と母親に叱られたが、私が「急に用事が出来た友達を家まで送って行った」と言ったら、すんなり信じてくれた。お箸は「何でか判らないけど無くした」と言って誤魔化した。
それから暫くは何事も無かったのだが、ある日また弟を揶揄う同級生が現れた。どうやら、家の外からたまたま見えたらしかった。私はまた、目に箸を突き刺して殺した。陰で弟を揶揄う者全員を殺した。
約三ヶ月。その日、私は見代塚という人の家へ行った。親からは「今日からここの子供になるの」と言われた。
家の一番奥の和室に通される。その時、後に父親になる源蔵という人にこう言われた。
「お前は子を何人も殺している」
と。けれど、それは嘘じゃないけれど嘘だった。だってさっき源蔵と奥さんが、私をそう脅すように話してるのを聞いたから。その時、「子供が子を殺せる訳がない」と言っていた。
けれど私は焦りを覚えた。例え冗談でも、それは本当だったからだ。
奥さんと思われる人が襖を開けて入ってくる。そして、「儀式」という名の「私の殺害計画」
が始まったのだ。私は和室に入る前、台所で料理に得体の知れない液体を混ぜているのを見た。あれは毒だと直感的に気付いた。
夫婦は箸に自分の血を滴らせて、私の前に置く。きっと箸に気を逸らす事で毒に気付かれにくくし、いかにも儀式感を出す為だろう。
それからお盆に乗ったご飯を差し出され、「食べろ」と言われる。けれど食べる訳がない。だって毒が入ってるんですもの。源蔵が「いいから早く食えと言っているんだ!」と声を荒げた時、私は慣れた動きで箸を持ち眼球に刺した。何度もやっていると上達するようで、丁度眼球のど真ん中に刺す事が出来た。
源蔵は踠き苦しみ、妻は悲鳴を上げる。時計を見ると午後七時二三分。私は源蔵の眼球を何度も刺した後、奥さんも同じように殺した。何となく気分で、箸に引っ張り出した眼球を刺した。やっぱり儀式は儀式っぽくしたかったのだ。
その時、襖が開いた。そこには見知らぬ子供が居た。多分、源蔵の子供だろう。その子供は惨状を見るなり駆け出して行った。きっと親が殺されたのが悲しかったのだろう。私は源蔵と奥さんの死体を二つ並べるように動かした。と、その瞬間、廊下から「たたたっ」と足音がした。さっきの子供だろうと、特に気にしなかったのだが、その子は部屋に入ってきた。そして私が振り返る間もなく、
「ドスッ」
私の背中に、包丁を刺した。その子は駆け出した後、包丁を取りに行ってたのだ。その子は私に何度も包丁を刺して、私を殺した。予期せぬ形で、「私の殺害計画」は成功してしまったのだ。
その後、村に女性がやってきて、四つ結界を置き区域ごと私を封印した。
七
『情報っていうのは人の感情を動かし、時には人を殺す。たった一つの情報で、人は大きく変わるんだ。その情報が嘘でもな。』
珠香の言葉が頭の中で何度も再生される。
「やっと能力が出てきたみたいだな」
「うん……ん?」
「ん?」
そこには珠香が立っていた。
「ぎゃー!珠香死んでる!?」
「いや、幽体離脱」
「幽体離脱…」
「ちょっと長時間離れた所で幽体離脱すると戻れなくなるから病院に戻る」
「え!?あ、ちょ」
「出来るだけ早く病院に来い。そしたら起こしてくれ」
そう言うと珠香はすーっと消えてしまった。
私は取り敢えず、番組の方に電話を掛けた。
「はいもしもし。」
「澄龍です。見代塚区域の謎が解けました」
「えぇ!?」
「明日話します。あと、珠香に会いました」
「水神さんに!?意識戻ったんですか?」
「幽体離脱みたいです。私、珠香を起こしに行きます」
「幽体離脱……気を付けて行ってくださいね」
「はい、行ってきます」
私は珠香の居る病院へと駆け出して行った。



























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