スマートフォンは電源を完全に切り、台所の生ゴミ用ゴミ箱の底に沈め、その上に重い図鑑を乗せて蓋をした。部屋のドアと窓にはすべて鍵をかけ、チェーンも締めた。
カーテンをきつく閉め、部屋のシーリングライトを最も明るい白昼色にして、ベッドの真ん中で膝を抱えていた。
人間の形をした何かが外から来るのなら、これで防げるはずだ。そう自分に言い聞かせた。
しかし、時計の針が「午前3時00分」を指した瞬間。
パツン、という、不吉な破裂音が響いた。
部屋の明かりが、一瞬にしてすべて消え去った。停電ではない。外の街灯の光すら、まるで世界から光が奪われたかのように、完全な漆黒が部屋を満たした。
直後、胸の上に、目に見えない巨大な鉄塊を落とされたかのような、凄まじい圧迫感が拓海を襲った。
「あ、が……っ」
声が出ない。
指先一つ、いや、瞼を動かすことすらできない。
全身の筋肉が、細胞レベルで外部からロックされている感覚。これまでに経験したことのない、狂気的な金縛りだった。
心臓だけが、壊れた時計のように爆発的な速さで鼓動を刻んでいる。
動かせるのは、眼球だけだった。拓海は必死に、血走った目を動かして部屋の中を見回した。
暗闇に目が慣れてくるにつれ、彼は「それ」を視認した。
ベッドの足元。暗闇よりもさらに深い黒を持った「人影」が立っていた。
その影の輪郭は、時折テレビの砂嵐のように激しくブレて、バグを起こしたように歪んでいた。影には顔がなかった。いや、顔のパーツがあるべき場所に、ぼんやりと青白い液晶の光のようなものが発光していた。
ジジジ……、ジジ……。
スピーカーがハウリングを起こすような、不快なノイズ音が影から漏れ聞こえる。
そして、そのノイズの合間から、声が聞こえてきた。
「つ、が……た……く……み……」
拓海は、自らの魂が凍りつくのを感じた。
それは、間違いなく「自分自身の声」だった。自分が普段、録音された自分の声を聴いた時に感じる、あの少し違和感のある、しかし紛れもない自分の声。
影はゆっくりと、関節を不自然な角度に折り曲げながら、ベッドの上へと這い上がってきた。
冷気。氷のような冷たさが、拓海の足首を掴み、ふくらはぎ、太ももへと這い上がってくる。金縛りで動けない拓海の体は、その冷気の通り道ごとに感覚を失っていった。
影が、拓海の胸の上に完全に跨がった。
顔のない、バグる液晶の顔が、拓海の顔の数センチ上まで近づいてくる。
「苦しい? でもね、君の脳の電気信号、すべて僕が受信しているよ。君が今『助けて』って思っていることも、全部データとして僕の中に蓄積されている。ありがとう。これで最後のピースが埋まった」
影の頭部から、青白い光の触手のようなものが伸び、拓海の目、鼻、耳、そして口へと突き刺さった。
脳内に、濁流のようなデータが直接流れ込んでくる。過去の記憶、感情、視覚情報が、すべて強制的に外へと吸い出されていく感覚。
























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