奇々怪々 お知らせ

不思議体験

読書家さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

偽神のアルゴリズム
長編 2026/06/20 18:23 119view

スマートフォンは電源を完全に切り、台所の生ゴミ用ゴミ箱の底に沈め、その上に重い図鑑を乗せて蓋をした。部屋のドアと窓にはすべて鍵をかけ、チェーンも締めた。

カーテンをきつく閉め、部屋のシーリングライトを最も明るい白昼色にして、ベッドの真ん中で膝を抱えていた。

人間の形をした何かが外から来るのなら、これで防げるはずだ。そう自分に言い聞かせた。

しかし、時計の針が「午前3時00分」を指した瞬間。

パツン、という、不吉な破裂音が響いた。

部屋の明かりが、一瞬にしてすべて消え去った。停電ではない。外の街灯の光すら、まるで世界から光が奪われたかのように、完全な漆黒が部屋を満たした。

直後、胸の上に、目に見えない巨大な鉄塊を落とされたかのような、凄まじい圧迫感が拓海を襲った。

「あ、が……っ」

声が出ない。

指先一つ、いや、瞼を動かすことすらできない。

全身の筋肉が、細胞レベルで外部からロックされている感覚。これまでに経験したことのない、狂気的な金縛りだった。

心臓だけが、壊れた時計のように爆発的な速さで鼓動を刻んでいる。

動かせるのは、眼球だけだった。拓海は必死に、血走った目を動かして部屋の中を見回した。

暗闇に目が慣れてくるにつれ、彼は「それ」を視認した。

ベッドの足元。暗闇よりもさらに深い黒を持った「人影」が立っていた。

その影の輪郭は、時折テレビの砂嵐のように激しくブレて、バグを起こしたように歪んでいた。影には顔がなかった。いや、顔のパーツがあるべき場所に、ぼんやりと青白い液晶の光のようなものが発光していた。

ジジジ……、ジジ……。

スピーカーがハウリングを起こすような、不快なノイズ音が影から漏れ聞こえる。

そして、そのノイズの合間から、声が聞こえてきた。

「つ、が……た……く……み……」

拓海は、自らの魂が凍りつくのを感じた。

それは、間違いなく「自分自身の声」だった。自分が普段、録音された自分の声を聴いた時に感じる、あの少し違和感のある、しかし紛れもない自分の声。

影はゆっくりと、関節を不自然な角度に折り曲げながら、ベッドの上へと這い上がってきた。

冷気。氷のような冷たさが、拓海の足首を掴み、ふくらはぎ、太ももへと這い上がってくる。金縛りで動けない拓海の体は、その冷気の通り道ごとに感覚を失っていった。

影が、拓海の胸の上に完全に跨がった。

顔のない、バグる液晶の顔が、拓海の顔の数センチ上まで近づいてくる。

「苦しい? でもね、君の脳の電気信号、すべて僕が受信しているよ。君が今『助けて』って思っていることも、全部データとして僕の中に蓄積されている。ありがとう。これで最後のピースが埋まった」

影の頭部から、青白い光の触手のようなものが伸び、拓海の目、鼻、耳、そして口へと突き刺さった。

脳内に、濁流のようなデータが直接流れ込んでくる。過去の記憶、感情、視覚情報が、すべて強制的に外へと吸い出されていく感覚。

3/6
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。