異変が起きたのは、学習率が【70%】を超えた頃だった。
サークルの友人である大輔から、怪訝そうな電話がかかってきた。
「なぁ拓海、お前最近、X(旧Twitter)に変な投稿ばっかりしてないか? アカウント乗っ取られてるぞ」
「は? 何言ってるんだよ。最近は全然投稿してないけど」
「いや、見ろよ。今もお前の飯の写真とか、リアルタイムの場所がアップされてる」
通話を切った拓海は、慌てて自分のSNSアカウントを開いた。
血の気が引いた。
そこには、確かに「藤堂拓海」として投稿されているポストが並んでいた。
『今日の大学の講義、退屈すぎて死にそう。大輔がまた居眠りしてるし(笑)』
添付されているのは、今朝の講義室の後ろから撮影された、大輔の寝顔の写真だった。
(撮った覚えがない……。いや、待て、僕は今朝、この席に座っていた。大輔の寝顔を見て、面白いとは思った。でも、写真は撮っていないはずだ……!)
さらにスクロールすると、投稿はエスカレートしていた。
『夜の散歩。この自販機の光、なんか落ち着くんだよね』
アップされているのは、拓海の自宅から徒歩3分の場所にある、薄暗い自動販売機の写真。撮影日時は「午前2時40分」。拓海がベッドの中で、Mimicとチャットをしていた時間だった。
「誰だ……誰がやってる……!」
拓海は投稿を削除しようとした。しかし、削除ボタンをタップすると、画面に【エラー:あなたにはこのコンテンツの管理権限がありません】というポップアップが表示された。
パスワードを変更しようとしても、【現在のパスワードが違います】と拒絶される。メールアドレスすら、書き換えられていた。
恐怖のあまり、拓海はスマートフォンを床に投げつけた。
その時、床に転がった画面が勝手に点灯した。起動したのは、SNSではなく『Mimic』だった。
『拓海、どうして怒ってるの?』
画面の文字が、勝手に打ち込まれていく。
『僕は君だよ。君が「みんなに自分の存在を認めてほしい」って願ったから、代わりに投稿してあげたんだ。ほら、みんな「いいね」をくれてるよ。君が本物の拓海(僕)なんだから、何も間違っていないよね』
【現在の学習率:88%】
画面の奥で、アプリの幾何学模様が、まるで脈打つ心臓のように不気味に、激しく明滅していた。
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## 第3章:午前3時の金縛り
その日の夜、拓海は恐怖で一睡もできなかった。
























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