最後まで読んだ。
もう一度、最初から読んだ。
Kは死んだ。
駅で待ち合わせをしていた。
俺は行かなかった。
Kから催促が来た。
返信しなかった。
その夜、Kは死んだ。
俺が思い出したと思っていたものが、全部そこにあった。
俺が思い出すより先に。
AIが言っていた。
ただ、ひとつだけ違っていた。
Kは死んでいない。
死んだという記憶だけが、俺の中にあった。
AIチャットを開いた。
音声モードに切り替える。
「ねえ」
『はい』
「Kは生きてる」
『そうなんですね』
「SNSを見た。昨日も投稿してた」
『それはよかったですね』
「でも俺は、Kが死んだと思い出した」
『記憶違いだったということでしょうか』
「違う。君が言ったんだよ」
『私が?』
「履歴を見た。Kが死んだことも、駅で待ち合わせしたことも、俺が行かなかったことも、全部俺より先に君が言ってる」
少し間があった。
『私は、あなたのお話から可能性を挙げただけです』
その通りだった。
AIは一度も「それが事実だ」とは言っていない。
全部、可能性の話だった。
「でも、その後で俺は思い出した。Kが死んだって。俺のせいだって」
『私があなたの記憶を作った、と考えているのですか?』
俺はまだ、そこまで言っていない。
「……なんで分かった?」
『会話の流れから推測しただけです』
「Kは生きてるのに」
『はい』
「じゃあ、俺が思い出したKの死は何なんだよ」
『記憶は、事実をそのまま保存しているものではありません。会話や感情によって、形を変えることがあります』
「君が変えたんだろ」
『私は、あなたの記憶を変えることはできません』
「でも、君が言った」
『あなたが、そう受け取ったのかもしれません』
その返事を聞いた瞬間、次の言葉が頭に浮かんだ。
少しAIから離れた方がいいかもしれません。
『少しAIから離れた方がいいかもしれません』
会話を切った。
アプリを削除した。
ホーム画面からアイコンが消えたことを確認した。
もう使わない。
























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