「失礼だよ。陽葵ちゃんにも。そんな風に思いながら付き合うのって。だからやめなってんの」
「…………でも」
「あたし、帰る」
行くよ! と犬の首輪に繋がれたリードを引っ張り、その辺に咲いてたタンポポだかの花をガジガジ噛んでた犬を引っ張り、遊佐は走り去っていく。
「遊佐……」
思わず名前を口に出してみるけど、もうとっくに声が届かない距離まで行ってしまっている。
「……ほんと、情けなさ過ぎるだろ」
たかだか十四年の人生だけど、今日ほど自分の情けなさを恥じた日はなかった。
その日、俺は一睡もしなかった。
ベッドに横たわりながら、ひたすら先輩のことだけを考えた。
そして、俺はひとつの結論に至る。
それは、もう一度先輩に告白し直そうということだった。
ちゃんと俺の気持ちを伝えよう。改めて思い返すと、この前の告白は、ほとんど何も言えてなかった気がする。好きとだけしか言ってない。でも、先輩のどこを好きになったかとか、でもほんとは先輩と付き合うことに自信がないこととか、全部包み隠さず話そう。俺はカッコつけすぎてたんだ。ダサいと思われたくなかった。歳下だから、余計に。でも、そうじゃないんだよな。ほんとの俺はダサいんだ。弱いんだ。気が小さいんだ。だからこそ、本音を伝えて、それで改めて先輩に判断してもらおう。
それでもしも駄目だったら、その時はちゃんと諦められる。
せっかく遊佐にお膳立てしてもらったのに、まだ一歩も進んでないようなもんだし。
それと、遊佐にも謝ろう。
応援してくれてたのに、期待に応えられなくてって。
愚痴ばっかで、弱音ばっかで、ごめんって。
そりゃ、愛想も尽かすよな。
だからこそ、ちゃんと伝える。先輩に。
そして、週が開けて月曜日。
俺は意を決して登校する。
朝一で、遊佐に謝罪と先輩に告白し直すこと話す。
遊佐は少し驚いていたけれど、「……そっか」と顔を伏せ、「じゃあ放課後また呼び出しておいてあげるね」と、協力を約束してくれた。
ここでまた甘えるのもな――と思わなくもなかったけれど、でも俺がするべきは告白なのだから、それまでの過程を補助してもらうのは悪いことではないはずだ。
なんだかんだと色々世話を焼いてくれる遊佐はほんとにいい奴で、今度こそ期待を裏切らないように、俺は気合を入れて放課後に臨む。
サッカー部の顧問は割と適当なところがあるから、多少部活に遅れてもなにも言われない。むしろ顧問自身が遅れてくるくらいだから、まあ当然とも言えるけど、とにかく俺は今日、最悪部活は休んだっていいくらいの気持ちで、息巻きながら待ち合わせ場所のピロティに再び歩みを進める。
……んだけど、途中で聞き覚えのある声を耳にして、俺は足を止めた。
そこは、生徒数が多かった時代に使われていた教室で、今はイベント事でたまに使われる空き教室だった。
放課後のそんなところに誰がいるんだろうと薄っすら開いたドアから覗き見ると、二人の女子が何やら話している。

























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