僕は友達が少ない。
いや、少ないんじゃなくて、いない。ひとりも。
部活をやらないのも、体力不足とか時間がないからとかじゃなくて、本当は誰とも話すことができないからだ。
僕は小さい頃から、相手が自分よりも優れていると感じると、何も言えなくなってしまう。
小学生の頃、テストで1点でも自分より高い点数を取ったクラスメイトには、自分から話しかけることができなくなったことがあるんだけど、それから僕のこの対人恐怖症みたいな病気が始まった気がする。
体育で活躍する奴も歌がうまい奴も、みんなみんな僕より凄い奴だって感じてしまうと、目を合わせることすらできなくなってしまう。
中学生になってからも当然それは続いていて、ひとつでも自分が勝てない『なにか』を見つけてしまうと、もう無理になってしまう。
同級生ですらこの有り様なんだから、上級生なんてもっての外だ。
でも、誰とも関わりを持っていないわけでもない。
近所の駄菓子屋にたむろってる小学生たちにはとても慕われているのだ。
中学生にもなって小学生と遊んでるなんてことがクラスメイトにバレたら、からかわれるに決まってるんだけど、でも僕は唯一の遊び相手でもある彼らとの関係を断ち切るなんてことはできないのだ。
彼らは純粋無垢で、僕の話を何でも信じる。
100点以外取ったことがないという嘘も、上級生をボコボコにしたという嘘も、彼女が10人いるという嘘も、何でも信じてくれるから、僕の口からは次から次へと嘘が飛び出してしまう。
尊敬の眼差しを向けられることがこんなにも気持ちいいことなんだなと、生まれて初めて知ることができたのは、僕を慕う彼らのおかげだし、口が上手い自分自身も褒めてあげたい。
そんな楽しい時間も、ある日突然奪われてしまう。
いつものように学校帰りに駄菓子屋に向かっていると、途中にある公園で、僕の取り巻きの小学生が高校生にカツアゲされていたのだ。
「やめろよー」
「返せよー」
彼らは財布を取り上げられてしまったらしく、泣きながら両手を伸ばすのだけれど、高校生たちは笑いながら一蹴する。
大人からすると、大した金額ではないだろう。
でも、彼らにとっては大事な大事なお金なのだ。
まして、縁もゆかりもない相手から強引に取られていいものじゃない。
僕は奮い立つ。
……けれど、足が前に進まない。
まるで地面に足の裏が貼り付いてしまったかのように、一歩も動けない。
何をやっているんだ。
目の前で子供たちがカツアゲされてるんだぞ。
こんなときに立ち向かわなくてどうする。
今が変わるチャンスじゃないか。
――そうだ。
僕は変わるんだ。
嘘をほんとにするのは、今なんだ。























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