そんな風に情報源の遊佐に責任転嫁をしながら列に並び、先輩の希望通りチョコレートムースラテを注文する。そして俺はドリップコーヒーだ。
当然砂糖もミルクも不要。
男は黙ってブラックコーヒーなのだ。
コーヒーを店員から受け取って、席の方に移動するけれど、テーブル席はほぼ満員状態で、なかなか先輩が見つからない。
トレーを持ったままウロウロしていること数秒、俺は気付く。
そういえば、トレーを持ったままウロウロしている男性に、世の中の女性は引くとどこかで聞いたことがある。
もしかしたらキョロキョロしている感じが男らしくないのでは……?
だったら、絶対に避けなければならない状況だ。
まさに今の俺は不安げにキョロついている男子中学生でしかなくて、こんな俺を見たら先輩が幻滅してしまう……。
しかし、ではどうしろと言うのだ。探さないと見つからないのに、探すことが許されないだなんて……。
こんななぞなぞみたいな状態、生まれて初めてだ。というか、女子とデートするのも生まれて初めてだし、女子にどう思われているかをこんなにも真剣に考えたのも生まれて初めてだ。
こんなにも初めて尽くしの俺が、果たして先輩に男らしくカッコいいところを見せられるのだろうか。俺の魅力で先輩を虜にすることなんて、できるのだろうか……。
自信はまったくない。でも、やらなければならない。そう、俺に課せられたミッションは、『先輩を惚れさせること』なんだから。
でもじゃあ、実際どうしたらいいんだろうという問題は解決の糸口も見えないし、先輩の姿も一向に見えない。
もしかしたら、あまりにも待たせ過ぎたから、怒って帰ってしまったのではないだろうか……。
いや、先輩に限ってそんなことは――。
「杉崎くん」
突然俺の肘をクイクイと軽く引っ張ったのはもちろん先輩で、「あそこ」と指差した先には先輩の鞄が置かれている二人掛けのテーブルがあった。
「ずっと手を振ってたのに、杉崎くん、全然気づいてくれないんだもん」
そう言って、少しだけ頬を膨らませる先輩。
あらゆる表情が可愛いのは当然だけれど、これは破壊力が凄まじ過ぎる。
今の顔、スマホの待ち受けにしたいなと思いながらテーブルに移動し、先輩にフラペチーノを、自分の前にはコーヒーを置く。
「ありがとー」と俺にフラペチーノのお金を渡す先輩に、「あ、いいですよ。俺が奢りますから」と、なるべくキザっぽくならないように断る。
今度こそポイントアップは確実だと思われたのは俺の勘違いでしかなくて、「恋人になったら奢ってね」と、無理矢理俺の手に数枚の百円玉を握らせる。
ああ、先輩の指ってサラサラしてて柔らかいなぁとか感触に浸っている場合ではなくて、俺はまたもここで失敗をしてしまったらしいことに絶望する。
ここまで全敗だ。なにひとつポイントは上がっていない。どころかむしろ下がってすらいる気がする。
このままだと、帰る頃には嫌われているんじゃなかろうか。
そんな最悪の予想が頭をよぎり、それだけは絶対に避けなければと頭を左右に強く振り、邪念を取っ払う。
「? 大丈夫?」
小首を傾げながら心配してくれる先輩はいちいち可愛くて、俺の方は毎秒好きになっていくのに、先輩は毎秒俺を嫌いになっていくんじゃないかという不安な気持ちを、やっぱり俺は頭を振って払拭する。



























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