いや今は親子漫才している場合じゃないってことくらい分かって! と怒りと悲しみが綯い交ぜになった感情を抱いている私の目下で行われている光景に私は母親の制止の意味を理解する。
「今な、西脇さんとこのおばちゃん、お布団たらふく持ってきてくれはったんや! ここに飛び降り!」
「いや、布団なんかじゃ危ないって! 変に身体を打ち付ける可能性だってある! 彩香、頼む! 消防隊を待つんや!」
「光輝くん……」
言ってることは十分分かるし光輝くんの言う通りにしたら何もかも上手くいくんじゃないかって根拠のない自信があるからその通りにしたいのはやまやまなのは確かなのだけれど、でもでも……
「あんたどこの坊主や、引っ込んどれ! これはあの子とおばちゃんの話や!」
坊主ておかん私の想い人になんてこと言うんやこれで私の恋の芽が摘まれちゃったら責任取ってよねマジで。
「ええから来い! 彩香! あんたがもし死んだらあたしも死んだる!」
OKおかん流石やおかんよくぞ言うてくれたわおかん!
おかんが用意してくれた布団があれば助かるって何だか心から思えてきたよ。というかおかんの手柄ってより西脇さんご夫妻の手柄だけどなって後でもし無事に生還したら直接自分の口で伝えようと思いながら足を窓枠に掛けている私の髪の毛をチリチリと焼き始める業火はまるで「さっさと行けや」と背中を押すかの如く背後に迫っていた。
「へあ!」
康太くんごめん! 私飛び降りちゃったよ!
でもごめんね。もう無理だったんだもん。あのままあの部屋にいたら私、焼け死んじゃうから。
不細工な掛け声を上げながら飛び降りた私は果たして、無事に命を長らえることに成功した。
いや、無事とは言い難く、やっぱりと言うかなんと言うか、五枚重ねの布団の山に上手に飛び降りた所までは良かったものの、強い衝撃に耐え切れなかった私の脆弱な右足はポッキリと折れてしまい、他にも軽い火傷とか打ち身とか色々あって、結局入院することになってしまう。まぁ一週間だけだったけど。
はぇー病院の食事ってこんな感じなんだーとか夜の病院てこんな感じなんだーとかお医者さんて意外と偉そうじゃないんだーとか看護師さんて忙しそうだなーとか、ミーハーな私は新鮮な環境に興味が尽きず瞬く間に過ぎ去った入院生活が終わった翌日に、松葉杖を私に渡しながらお母さんは光輝くんが逮捕されたことを教えてくれた。
簡単に言うと、あの日私の家は放火されてて、犯人は光輝くんだったようだ。
あの時――私が飛び降りた時。お母さんや夢野は駆け寄り良かった良かったと大いに喜んでくれていたけれど、そこに光輝くんの姿はなかった。まぁもう夜中だったし明日も朝からバイトだろうからあんまり私のせいで夜更かしさせたくないしそれはそれで良かったと思ってたけれど、彼の心情は全く違うところにあったみたい。
更に後日聞いた話によると、どうやら放火の目的は私を殺したかったからとのこと。
理由を問うと、彼は不敵な笑みを浮かべこう言ったらしい。
「あいつは僕から夢野を奪ったからです」
はぁぁぁぁぁぁ。
好きってめんどくせ。
まぁ、あれだな。
とりあえず夢野を殴りに行くか。


























愛だね( ꈍᴗꈍ)