お母さんの子供であることがなんの根拠になるのかまだ未成年でもあり未婚でもあり出産経験のない私には皆目見当がつかないけれど、無理なものは無理なのだ。
「大丈夫やって! 彩香! 二階からならたいした怪我もせんて!」
「あかん……だって私今、足首捻挫してんねんで……」
バイト中に階段を踏み外して全治二週間の診断を貰った私は今や立派な怪我人で、五体満足な普段でもこの高さから飛び降りるなんて二の足どころか四の足も震え上がって躊躇するのに、今飛び降りなんてしたら捻挫どころか骨が粉々になって二度と歩けなくなるのではという恐怖感が恐怖心を限界まで膨れ上がらせてしまっている気がする。
「いやでもあんた、このままでは死んでまうで! 死ぬのと歩けなくなるのどっちがいやや!」
「どっちもいやや!」
「どっちか選び! 子供やないんやで! それでもあんたお母さんの子供か!」
子供なのか子供じゃないのか良くわからん! と叫びたいけど、もう背中がかなり熱い。火は背後まで迫っている。
「……飛ぶ!」
覚悟を決めた。そうだ、死ぬよりマシだ。絶対に歩けなくなるわけじゃないんだし。
「彩香!」
お母さんと同じく私のファーストネームを呼んだのは、夢野でも近所の親父でもなく、私の想い人だった。
「あ……光輝くん」
「頑張れ! もうすぐ消防車が来る! 俺が119連絡したからもう大丈夫や!」
あ、そっか。消防車が来ればはしご車で安全に下してくれる。流石私のナイト様だ。
「光輝くぅん……」
消防車というワードと光輝君の声を聞いて急に力が抜け、私はその場に座り込んでしまう。けどすぐに立ち上がる。
「あっつ! あかん、もう背中まで来とる!」
部屋は真っ赤に染まり、もう中になにがあるのか全く分からない。炎との距離は数十センチ程度で手を伸ばせば手首まで炎に包まれてしまう。
「あかん、光輝君、私やっぱ飛び降りる!」
「落ち着け! ヘタしたら死ぬ可能性だってあるんや! 消防車が来るまで何とか持ちこたえてくれ!」
「光輝くん……」
「あんた何言うとんねん! うちの子殺す気か! 彩香! 早く飛び降り!」
「おかん……」
「そうや! 飛び降りろ! 大丈夫、俺がちゃんと受け止めたる!」
「ストーカー……」
「誰がストーカーや!」
普段なら間違いなく光輝くんの発言を支持するけれど、多数決で選ぶなら飛び降りる方を選ぶべきだ。まぁストーカーは別としても、お母さんは私を本気で心配してくれているのは間違いないし、何よりも私がこの世で最も信頼できる人だ。
「おかん! 私、飛ぶ!」
「おう! それでこそあたしの子やで! あ、やっぱ待ち!」
「どないやねん!」


























愛だね( ꈍᴗꈍ)