電話を切り住職に何度もお礼を言って帰ろうとした時、彼に呼び止められた。
「もうあの子とは離れた方が良い。申し訳ございませんが、先程の話は全て嘘なのです。」
耳を疑った。嘘?うそ?ウソ…?
「あれは…守護霊なんて良いものじゃない。悪霊なんて優しいものでもない。ただただ、悪。それしかありませんでした。あの写真に写った時点で、もう手遅れなのです。私どもではどうすることもできません。」
俺は言葉を失った。
「苦しんでいるカオの霊は、助けを求めているもの達です。逆に、”アレ”のように満面の笑みを浮かべているもの。それらが考えていることは、”もうすぐ連れて行ける”。それだけです。」
住職はなおも続ける。
「”アレ”と同じ空間にいたあなたも本来危ないのです。ですが、あなたはまだ大丈夫。アレが””移る””前に、離れなさい。心苦しいかもしれませんが、あなたのためなのです。どうか、後悔のない選択をなさられますよう…。」
そう言って住職は話を終えた。
俺は、悩み、悩み抜いた結果────
ケンジとの連絡を、断った。
最低だ、分かっている。それでも、自分まで巻き添えになるのは嫌だった。
それから2ヶ月後、ケンジが亡くなった事を聞かされた。自宅の階段から滑り落ち、呆気なく亡くなったらしい。
不思議と涙は出なかった。
いや、泣いてはいけなかった。俺は二度と彼の事を想い涙を流す事は許されないのだ。
しかし最後に、どうしてもケンジの顔を見たくなった。最低な俺を、彼は許してはくれないだろう。それでも最後に会っておきたい。
通夜の日取りを聞き、ひっそりと別れを告げに行った。
思えば、これが神の逆鱗に触れたのかもしれない。
通夜から帰り、自宅のドアを開ける。
真っ暗な玄関で、通夜用の靴を脱ぐ。
その時だった。
やけに自分の後ろから視線を感じる。
じっとりとした、生暖かい視線を。
俺は一人暮らしでペットもいない。
そんなわけない、と思いながら急いで自室に駆け込み、震える手でスマホを開く。
恐る恐るカメラロールを開き、あの写真をチェックした。
そこには──
ケンジの横にいたはずの女が、満面の笑みで俺を見ていた。
























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