小学生の頃、よく家を訪問してきて両親と世間話をしていたり、私に構ってくれていた渡辺さん(仮名)という男性がいました。
年齢は当時20代。小太りですが清潔感があり、物腰も柔らかで陽気な方。
いつも私が好きなハイチュウを持ってきてくれていたのを覚えています。
親戚という訳ではなく、どうやら彼は地元のとある会社の社長の一人息子さんで、父とは飲みの席で知り合った、との事でした。
私が高校生になった頃、渡辺さんが我が家を訪れて言います。
「実家を出て一人暮らしにしたいんだけど、○○さん(父の名前)いい物件知りませんか?とびきり安いところがいいんですが…。」
父は昔不動産に務めており、当時は既に退職していたものの、何か良い情報を得られないかという事でした。
父は言います。
「安い、か。ちょうどこの前話を聞いた物件があるが…。」
そう言って父が紹介したのはサクラハイツ(仮名)という少しお高めのアパート。
ですが、そのアパートの2階、203号室だけやけに安くなっているのだと言います。
理由は分からない。人が亡くなったという話も無ければ、他の問題も特にない。
ただ、前の住人が突然「もう帰りません。」とだけ電話を寄越し、家具もそのまま残っている空き部屋になっているそう。
その住人が帰ってこなくなった理由も不明。
それを聞いた渡辺さんは、後日即契約を決めたそうです。
しかし私は彼に聞いたことがあります。
「そんな得体の知れない、なぜ安くなったのか分からない部屋を契約して怖くないのか?」と。
彼は言いました。
「大丈夫。幽霊やオカルトなんて気のせいだし、メンタルの問題なんだよ。俺は全く信じてないし、気が滅入ってることも無い。俺みたいな人からすれば、こんな物件は安くて最高の物件に早変わりするんだよ」
あれから数年。
私がなぜこのようななんでもない話を今になって語っているのか?
幽霊なんていない、オカルトなんて信じてないと語っていた、陽気な彼。
つい先日、その部屋で首を吊って亡くなったということです。遺書もなく、唐突に。
一体彼に何があったのか、自殺する理由なんて無かったのに。
今でも空き部屋になっているその部屋。
一体何があるんですかね?


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。