僕は今、田舎にある実家に帰って来ている。家の周りは山に囲まれて、空気がとても澄んでいた。久し振りに見る景色は、僕が子供の時とあまり変わっていなかった。
僕はふと、子供の時によく行っていた秘密基地を思い出した。そこは森の中を暫く進んだ所にある。緑の野原と1m程の小さな池のある場所。僕は子供の頃の記憶を頼りに森の中を歩いていった。
昔の記憶が少しずつ鮮やかになっていく。十五分程歩くと、あの野原が見えた。
小さな白い花が咲いていて、木漏れ日に照らされた小鳥がチュンチュンと鳴いている。池は思っていたより深く、底は見えなかった。僕は其処で背負っていたリュックサックを下ろし、小さな池の中を眺めていた。
「ちょっと良いかい?」
僕は背後から声を掛けられた。
僕「…こんにちわ」
振り返ると、五十代位のおじさんが立っていた。
僕「お久しぶりですね。」
「ああ、元気にしていたかい?」
この人は、僕が子供の頃にこの場所で何度か会った事がある。決まってこの人は、何時も池で洗い物をしていた。
僕「池、使いますよね。ちょっと退きますね。」
僕は思いリュックを持って少し場所を開けた。
「悪いね。使わせてもらうよ。」
おじさんは袋から汚れた出刃包丁を取り出した。
僕「おじさんは、今もよく此処に来ますか?」
「あぁ、しょっちゅう居るよ。ところで、君はまた昼寝をしに来たのかい?」
そういえば、僕は子供の頃この場所に来る時は大体昼寝をしていたな。何だか懐かしい感じがした。おじさんは何一つ変わっていなかった。
僕「…いや、今日はおじさんと同じだよ。」
おじさんは、一瞬驚いた反応をしてから優しくにっこりと笑った。
「…そうか。君も大きくなったなぁ。」
そう言うおじさんを横目に見ながら、僕も重いリュックの中から汚れた包丁を取り出した。
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「どうしたんだい。悲しい顔して。」
僕は学校でいじめられ、一人で池の横に座って泣いていた。
僕「学校で奥山君にいじめられたんだ。」
「そうか…。それは大変だな。」
おじさんは僕の肩に手を置いた。
「もう大丈夫だ。おじさんが助けてあげよう。今日はもう時間が遅いから帰りなさい。」


























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