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ヒトコワ

嘘つき怪談児さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

にゃーん
短編 2026/02/28 01:41 90view

 「よう、久しぶり!」
 声をかけたら、Aはこっちを見て、ああ、久しぶりと言った。続けて、どう、元気でやってる?とAの方から訊いてきた。
 「ああ、元気だよ。そっちは?」
 「まあ、相変わらずだね」
 そう応えるAに対して、僕はあのことを訊きたかったが、ある意味ちょっとセンシティブな話題なので、どうしたものかとちょっと迷う。そうしたら、Aの方から、その話題を出してくれた。
 「家の方はさ、出るといえば出るし、家に出てるのかどうか、悩ましいところなんだよね」
 ん?どういうことだろう?
 「事故物件だから、幽霊が出るという話じゃないの?」
 Aは大学に入って、不動産屋で下宿先を探していたときに、紹介される物件を、家賃が高いからと何件か断っていたら、その物件を紹介されたそうだ。いわく、以前住んでいた人(僕たちが通い出した大学の先輩だったらしい)がその部屋で縊死していたのだそうで、清掃とかキチンとしているから実害はないけど、気にする人は気にするから、格安にすると言ってきた。それで、Aも、一緒に不動産屋に行った親も、そんなことは全く気にしないから、即決でそこに入居した。で、僕は幽霊とか信じる方だから、その後のことが気になっていたんだ。
 「出るのか出ないのか、どっちなんだよ?」

 「それが……、出るのは、確かに出てるんだ。だけど、それが、事故物件だからというわけではなさそうなんだ」
 Aが言うには、夜、寝ていると、枕元で猫がカリカリを食べている音がする。もちろん、部屋の中には、猫などいないし、もちろん、カリカリも置いてない。起き上がって、電気をつけたら、物音は消えた。
 そんなことがあった翌朝、実家から電話があって、飼い猫のマロンちゃんが亡くなったことを知った。それから、毎晩、猫がカリカリを食べる音が聞こえるが、不動産屋に確認したところ、その部屋では、人は死んだが、猫は死んでないとのことだったので、部屋に憑いている霊ではなく、自分がかわいがっていたマロンちゃんの霊だと考えるのが自然なので、(幽霊が)出るといえば出るが、事故物件だから出るというわけではないということだそうだ。
 事情は理解したが、なんかスッキリしない。
 「で、怖くないのかよ?」
 「何が?」
 「猫にせよ、出るんだろ。幽霊が」
 「いや、マロンちゃんだよ」
 「だから、そのマロンちゃんの霊が」
 「かわいいやん。別に、何か迷惑しているわけでもなし。ただ、カリカリいうだけやん。生きてるときはさ、予防接種で病院につれていくときなんか、いつも引っ掻かれたけど、死んでからは、そういうこともないから、今の方が平穏なくらいだ」

 「祟り的なことはないのか」
 「これといって、害にはなってない」
 「ちゃんとお供養してやった方がいいんじゃないのか?」
 「供養したら成仏できるもんかね?動物霊でも?」
 「まあ、いっぺん、お寺さんに聞いてみなよ。最近はペット供養してるところも多いし」
 その日は、そんな感じで終わったんだが、その後も、会うたびに、その猫の幽霊について話したが、相変わらず、夜になると、猫がカリカリを食べる音が聞こえるという。
 そして、その度に、Aは、別に問題はおきてないから、との一点張りで、祓ってもらうなり、供養するなりした方がいいという僕の助言を無視し続けたんだ。
 彼の言うように、何か被害を受けている様子はない。とはいえ、僕としては、やはり納得がいかない。だから、会うたびに、猫の霊を適切に処理しろと言うのだが、Aは頑として言うことを聞かない。
 でも、おかしいと思わないか。害があるかないかとか、生前、かわいかったとか関係ないだろう。おかしいじゃないか。なあ、君もそう思うだろ。思うだろ。思うだろ。思わないとおかしいよな。君。君も思うだろ、そう思うだろ。な、だから一緒に説得してくれよ。Aを、さ。
 君も、そっちの君も、おかしいと思うだろ。思わなかったらおかしいよな。幽霊だぞ、幽霊。一緒にいても平気なんて、もう正気の沙汰じゃないだろ。そう思わないと、君もおかしいだろ。な、変だろ、おかしいだろ。おかしいだろ。おかしいだろ。何とか言えよ。君もあれか、幽霊と平気で同居できるタイプか。認めない。認めんぞ。許さん。許さん。許さん。
アアアアアアアアアアアアアアアア!許さん!
な、おかしいだろ。おかしいだろ。おかしいだろ。……

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