「コラッやめなさい!」
看守に両腕を掴まれる形で引きはがされる。それでも俺は抵抗し続けた。そんな俺を見下すような目すると、その少女はため息をついて話し始めた。
「じっとしてられないなら、そのまま聞いてね。私は今日、あなたに真実を伝えに来た。普通、未成年かつ凶悪犯罪者である君とは、第三者である私はお話しすることはできないんだけど」
そう言うと少女は立ち上がって一枚の紙を取り出して俺に見せつけた。
「あなたの祖母・岩祭タヱさんから委任状を預かっているわ」
俺は何を言っているのか理解できなかった。少女は座り直すと話を続ける。
「単刀直入に言うけど、あなたのお父さんとお母さんを殺そうとしたのは叔父さんの久彦さんじゃない」
一呼吸おいて、少女は言った。
「叔母のつゆ子さんよ」
「つゆこ・・・おば・・・」
俺は部屋の前で弱々しく俯く彼女の姿を思い出した。
「この一連の事件は、つゆ子さんが岩祭家を崩壊させ、乗っ取るために企てたものよ」
「・・・。」
「ま、正確には崩壊させるための“きっかけを作った”っていった方が正しいかしらね」
それからその少女は、岩祭家の成り立ちと御門家の呪い、つゆ子が御門家の末裔であったことを告げた。岩祭家が御門家から神職を奪い取り、今日まで何食わぬ顔で存続してきたこと。御門家はそれを恨んで、一族同士が殺し合う呪いを岩祭家にかけたこと。そして叔母のつゆ子が御門家の末裔であり、その復讐に俺はまんまと利用されていたこと。
もう、十分だった。
「あなたはね、その呪いに踊らされた可哀想な犠牲者の一人なのよ」
「やめてくれ・・・」
「あなたは岩祭家を取り返すつもりだったんでしょうけど、元々は御門家の物を奪ってできたのが岩祭家」
「やめろ・・・」
「あなたは復讐する側じゃなくて復讐をされる側だったの」
「やめろォ!!!」
断末魔のような叫び声が、面会室に反響した。
「もうわかったから・・・もう、いいから・・・」
感情なんてとっくにどっかに落としてきたつもりだったのに涙があふれだしてきて止まらない。俺はとんでもないことをしてしまったのだ。悔やんでも悔やみきれない。本当に、本当に・・・。
「今の話を聞いて、」
少女が立ち上がる。
「そんだけ泣くことができるなら、あなたは呪いなんかに負けたりしない。もっと強くなれるわ」
それだけを告げると、こちらを振り向くこともなく少女はその場を立ち去った。
扉の閉まる音と俺のむせび泣く声だけが、そこに残っていた。

























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