「はい」
「それは『後継者は兄の弥一郎に』という文言を『二人で話し合え』という文言に内容をすりかえることだった。そうですね?」
「はい」
「動機について聞かせてもらえませんか。あなたもご存知でしょう。あなたがやったたった二つのことが原因で今、岩祭家は壊滅状態。世間は蜂の巣を突いたように大騒ぎしている。ね、一体何が動機なんです?」
「はい」
「はいはいはいはい言ってねェで、ちったァ話してくれませんかね」
被告人しばしの沈黙
「・・・知って、」
「え、なんです?」
「知って、しまったんです。」
「知ってしまった? なにを?」
「フ、フフ、アハハ」
「笑ってないで質問に答えてくれませんか? 岩祭さん」
「アハ、アハハ、アハ・・・・・・だからこれは、“私の復讐”だったんです」
その後、被告人はその場で発狂。会話の継続は困難であると判断し、取り調べを一時中断した。
〇
12月22日 午後3時20分
拘留されてから何か月が経ったのだろうか。看守のやつが言うには、俺は今、世間で最も注目されている中学三年生らしい。どうでもいい、そんなこと。俺は岩祭家の当主にさえなれればそれでいい。
「おい、672番」
看守が俺に向かってそう言った。俺の名前は岩祭紀一郎だと何度も言っているのにこいつは聞く耳を持たない。脳なしだ。
「672番、面会者だ。さっさと立て」
看守に無理やり連れだされて、俺は透明のガラスで仕切られた無機質な空間に放り出された。
「お久しぶり、紀一郎くん。元気してたかな?」
そこには、あの時見た少女が座っていた。
「あぁ、ああああぁぁ、」
そいつがいる場所めがけて思いっきり突進した。
ガンッ!
「おまえのせいで! おまえのせいで!」
ゴンゴンと鈍い音だけがその空間に響く。


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。