そんな日の夜の事
今夜は本当に人の通りが無くて、いつものように欠伸を我慢しながら座っていると
「祭り」「神社」「盆踊り」と歩いて行く人の会話を耳にします。
(ここじゃなくてもっと人がいる場所にいこう)とA君は思い立ち、祭りがおこなわれている
神社の境内に入り込んで机と椅子を出しました。
屋台の人から「ここは場所が決まってるのだからあっちに行ってくれ」と怒られ、結局は
参道から少し離れてしまい落胆しながらもボッと座っていたのです。
ふと参道を行き交う人々を眺めていると、不思議な人を見つけました
人ごみの中をスルリスルリと躱して流れるように参道の出口に向かう少年から目を離せ
なくなったのです。なにより不思議なのは交差する人たちにはまるで目に入っていない
ように誰も少年に気がついていないような、それでいて少年は向かって来る人たちを
スルリと躱して速度を緩める事もせずに抜けていくのです。
A君は顔を横に向けて少年を見ていると、ふと少年は立ち止まりA君の方を見たのです。
参道は屋台の灯に照らされていて、本来なら少年が少し暗い場所に座るA君と目が合う事
などあり得ないのですが、少年はA君を見つけて近寄って来たのでした。
中学生くらいの背丈でしょうか、少年は屋台の脇を通りA君の正面に来ると
「なにをしているの?」と声を掛けて来ます。
一瞬で「客ではない」とA君は思い、メンドくさそうに「手相を見る占いだよ」と言うと
少年は「易」と書かれた灯を見ながら「て・・そう?てなに?」と尚も聞いてくる。
「占うんだよ」「う・・らなう?」
A君はこの少年が少し知恵が足らない子供で親とはぐれた迷子なのかと思いました。
「手の平を見て悪い事や良い事を教えるんだよ」とA君は少し丁寧に言うと
少年は「ああ・・きとうふのことか」と言います。
「きとうふ?」聞いた事がない単語と、どうやら理解したらしい少年の答えにA君は
少し戸惑いました。「手の平を見るのか」と少年は自分の手の平を開いてA君に示すように
出して来ます。
A君は少年の出した手の平を一瞬見ると椅子に崩れ落ちるように座りあわてて机を畳んで
転がるように参道から階段を降りて逃げ出しました。
家に逃げ帰り先生へ電話します。
「手相が無い?少年に遭ったと言うことだな」と先生は怖がるA君の報告を聞くと
























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