静かな病室内に、無機質な信号音が低く鳴っています。
五十過ぎくらいの白髪の医師は母の胸元から聴診器を外すと私に軽く挨拶をしてから、
「本人からナースコールが鳴ったのが、ええっと何時だったっけ?」と言いながら隣に立つ看護師に視線をやる。
若い看護師は素早く手元のファイルを確認し、「1:11でした」と答えた。
医師が続ける。
「それで駆けつけると急激に血圧が上昇しており、かなり苦しがっておられたので、すぐに緊急な処置を施しました。
しばらく容態が安定していたのですが、また、ナースコールが鳴りました。
それが、ええっと……」
「2:22です。」
また隣の看護師が冷静に答えます。
「そう、その時間に再び駆けつけたところ今度は数分間意識を失う危ない場面もあったのですが再び緊急処置を施し、なんとか持ち直して現在は通常の状態に戻っておられます。
確かに今は落ち着いておりますが、まだまだ予断の許さない状態は変わりありませんので、こちらとしても細心の注意を払って様子をみていきたいと思っています」
続けて、看護師が、
「お父様には3時前頃に、こちらからお電話いたしました」
と付け加えました。
そこまで説明すると、医師と看護師は部屋を出て行った。
※※※※※※※※※※
一人、病室に残った私は横たわる母の横顔を眺めながら、今回の奇妙な偶然に思いを巡らしていました。
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