「どうしたの、こんな時間に?」
私が尋ねると、
「すまんな。実はさっき病院から電話があって、母さんの容態が急変したらしいんだ。
それで、お前に教えてあげようと思ってな」
とんちんかんな父の行動に怒りがこみ上げた私は、
「何言ってんのよ!私のことなんかより、早く病院に行ってあげなさいよ!」
と、つい怒鳴ってしまいました。
慌てて奥の部屋に走りコートを羽織ると、玄関に戻ったのですが、そこには既に父の姿はありませんでした。
※※※※※※※※※※
祈るような思いでハンドルを握りながら、私は車で母の入院している病院に向かいました。
「まったく、お父さんって、肝心な時にいつもこうなんだから」
イラつきながら運転していると途中けたたましいサイレン音を鳴らしながら走る救急車にすれ違い、いやな予感が心をよぎります。
病院の広い駐車場に車を停めると夜間出入口まで走り守衛の人に事情を告げ、エレベーターホールに続く廊下を走りました。
四階で降り、母の入院している四〇五号室に向かいます。
ノックをしてドアを開けると、ベッドの傍らに立つ、白衣の医者と看護師の背中が目に飛び込んできました。
「娘ですが、父から聞きまして……」と言って私は、医師に対面する母の枕元に立ちます。父はまだ来ていないようです。
元気なころよりひと回り小さくなり痩せた母は酸素注入器を付けられ、右腕に点滴を打たれていました。
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