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不思議体験

よなかさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

母の手料理
短編 2025/09/11 00:42 10,821view
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 怖い、とは思わなかった。
 むしろ、救われていた。
 あの温もりが、まだここにある。
 誰かが、どこかで、それを運んできてくれる。
 そう信じたかった。

 ある日、早めに帰宅できた。
 宅配ボックスに入るところを見られるかもしれない。
 そっと、玄関に潜んでいた。

 18時27分。

 外階段の軋む音。
 誰かが、歩いてくる。

 箱を抱えた、女の人。
 髪が長くて、膝まで届きそうだった。
 顔は見えなかった。ただ、歩くたびに、くぐもった音がした。
 水を含んだような、ぬち……ぬち……という音。

 わたしが覗き込むと、女は止まった。
 ゆっくりと、首だけが、回った。
 真っ白な顔。

 目が、なかった。口も、なかった。
 なのに、声が聞こえた。

「おかえり」

 その声は、母の声だった。

 気がつくと、部屋の中にいた。
 靴を脱いだ記憶がない。鞄もどこかに消えていた。
 でも、テーブルの上には、あの箱が置かれていた。

 今日は、肉じゃが。
 温かかった。
 食べながら、泣いた。
 怖さもあった。でも、それ以上に、恋しかった。

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コメント(2)
  • あまりこわくない

    2025/09/17/14:33
  • よかったね

    2025/09/22/18:03

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