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不思議体験

よなかさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

廃墟の椅子
短編 2025/09/15 18:49 2,379view
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 大学三年の夏。
 同級生の秋山が、ある日ぽつりと「面白い場所見つけた」と言った。

 郊外の山にある廃旅館。
 地元の人でも知らないような小道を抜けた先にあり、地図にも載っていないという。

「ほんとにヤバいらしいんだけどさ、行ってみたくて」
 僕ともう一人、林田を誘って、三人で出かけることになった。

 夏の終わり。曇天。
 木々のざわめきが湿っぽく、登山道の奥は獣道のように細かった。

 やがて、木々の切れ間から、屋根の崩れた三階建ての建物が現れた。

 元は温泉付きの旅館だったらしい。

 「ほら、玄関の意匠、なんかいい感じじゃない?」
 秋山は嬉々としてスマホを構える。

 中は崩落が進み、廊下には瓦礫が散らばっていた。
 畳は腐り、壁のカビの匂いが鼻に刺さる。

 二階の大広間に足を踏み入れたときだった。

 がらんとした空間の、中央。
 ぽつんと、一脚だけ、木の椅子が置かれていた。

 まるで“そこに座っていたもの”だけが退けられたように、そこだけ空気が違った。
 床の埃も、その椅子の周囲だけ不自然に少なかった。

「うわ、絵になるな……」

 秋山が無言でスマホを構えた。
「撮んないほうがよくない?」
 林田が小声で言ったが、止める前に、シャッター音が三度響いた。

 椅子はただの椅子だった。
 誰も触れず、近づかず、それで済んだと思った。

 一週間後、秋山が失踪した。

 当日の夕方までは、普通に大学にいた。
 講義も出て、LINEにも反応があった。
 だが夜、バイト先に現れず、電話も不通。
 警察も動いたが、部屋も財布もスマホもそのまま残っていた。

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コメント(1)
  • 怖い

    2025/09/19/08:14

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