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ヒトコワ

沈丁花さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

積もり積もった痛みの果てに(加筆修正版)
長編 2025/09/05 11:36 4,837view
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 Xはその数日後、俺にこれまでのことを謝った。やつの家の電話で”呪術師の××先生”と無理に話をさせられたこともあるが、その正体はやはりQだった。XともQともプライベートで会うことはなくなり、その後親の仕事の都合でXとその兄弟達は引っ越していった。俺は正真正銘の人間で、祖父母や親兄弟とも本当の家族であると再確認できたことが、本当に嬉しかった。

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 だが、「ごめんなさい」や「悪気はなかった」で済むなら、この世に警察や裁判所はいらない。
 Xとその友人たちのせいで、俺が乱暴でいやらしい男達と交流しているという事実無根の噂がたったのだ。友人のNさんとは仲直りをしたが、6年生になるとクラスが別になった。この時の担任も冷酷非道なやつで、俺がいじめっ子のDやEに馬鹿にされていても、いつも俺ばかり怒られた。給食も毎日一人で食べた。
 俺はいなくなったXを激しく憎悪し、何度も不幸せを願った。また、俺は学校で俺をいじめる奴らや俺を冷たく扱う奴ら全員に宿怨を抱き、その人生が辛く苦しいものになるよう望んだ。中でも、特に意地が悪かったA・B・D・E・F・G・Qの7名には、必ず復讐をすると心に誓った。

 報復をする機会は、中学入学後にやっと訪れた。ある時Aが、学校で友達と一緒になって俺の声真似をしてきた。俺はその現場を逃さず、偶然居合わせた数学の先生に、これまでAから受けてきた嫌がらせの数々を暴露してやった。Aは流石にショックを受けたようで、それから俺を避けるようになった。

 

 その後、俺はひとり遠方の高校と大学に進学した。
 AはNさんと同じ高校に入ったが、駅で出くわした時、なかなかの不良少年のいでたちをしていた。後に彼は高校を中退したらしい。
 別のいじめっ子だったBは、たまたま俺の父親が働く会社でアルバイトをしていたが、夢を追う為に高校を辞めたがっていると聞いた。お節介でええかっこしいの俺の父親はBの退学に反対していたが、
「赤の他人が、オレのすることに口出ししないで下さい!」
と、超直球で反論されたらしかった。そんな父に俺も、
「それはBくんの言うとおりだろう。」
と、意見を述べてあげた。結局Bが高校を中退したと聞いたとき、俺はほくそ笑んだ。

 最恐最悪の小学生だったXも俺とはちがう高校に入学したが、偶然駅で見かけたとき、ものすごい厚化粧の不良少女になっていた。

 悔しいが、ずる賢く口もよく回るDとEには俺は太刀打ちできなかった。FとGに遺恨を晴らすチャンスも訪れなかった。

 Xの共犯だったQに復讐をする機会もなかったが、やつは再婚もできないような年になってから離婚をしたらしい。けれども、AやBの高校中退もQの離婚も因果応報などではなく、彼らが選択した道である。

 
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 ただし、大人になった今ならば、なぜXが幼くしてあのような人間になったのか、大体想像がつく。
 Xは実の父親から性的虐待を受けていたのだろう。やつは宝物だと言って、女性の裸の本を何冊も持っていた。Xの家の近くの公園で苦手な鉄棒を無理にさせられ、その折に勝手にプライベートゾーンを触られたこともある。(その後俺は暴れて鉄棒から落ち、軽いケガをした。)
だが、あいつも俺もまだ男女のまぐわいなど知らない子どもそのものだったので、俺はまだ裸にされたり、陰部を触られただけで済んだ――それだけでも、十二分にひどすぎる虐めであるが。

 Xのお母さんは旦那の異常性に気づき、離婚をしたが、忙しさのあまり子ども達をほったらかしにしていた。両親のそういった所業が、小さなXから他者への思いやりというものを奪ったのだろう。そうして、Xという美貌の極悪人は、花蘇芳という凶暴な別人格を私の体内に目覚めさせた。

 最後に戦慄したことが、中学で同じ部活をしていた子がXの親友だったことだ。その子をここではWさんとする。WさんはXと同じクラスだったらしく、将来はXとペアを組んで仕事をすると吹聴するほど仲が良かったのだ。しかも彼女は、Xに勝るとも劣らない別嬪さんだった。ちなみに、私は運よく3年間Xとは別のクラスで過ごせた。

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コメント(5)
  • 花蘇芳(沈丁花)です。Xにされたことを付け加えました。あまりにひどい内容だったので、これまで記憶の奥深くに沈めていました。Xがいかに常軌を逸した子どもだったのかをもっと書きたいと思い、勇気を出して加筆しました。これまで読んでいただいた731名の皆さま、大変申し訳ありませんでした。いつも謝ってばかりですみません。ごめんなさい。

    2025/09/06/13:40
  • 花蘇芳(沈丁花)です。一部、文のつながりが分かりにくい箇所がありましたので、訂正しました。Xと対峙する覚悟を決められたのは、決して自分の怒りの力だけではなかったので、もっと詳細に描写しました。

    2025/09/07/00:47
  • Xマジで処刑どころか地獄行きだろABCDEFとかも

    2025/09/21/15:53
  • 花蘇芳(沈丁花)です。コメントありがとうございます。Xには放課後さんざんにまつわりつかれましたが、「学校では話しかけないで」と言われていました。XやQ、他のいじめっ子たちにされたことを全て書いていたらただの愚痴になってしまうので、特にひどかったことだけを書きました。あまりに悪質すぎて、書けなかったこともあります。この作品で「本当に恐ろしいのは生きた人間の所業である」であることを伝えたかったのですが、ストレートに言いますと。不完全燃焼感が残りました。

    2025/09/26/11:02
  • 花蘇芳(沈丁花)です。一部、加筆をしました。

    2025/10/24/10:59

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