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不思議体験

沈丁花さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

墓場で待つもの達
短編 2025/08/07 21:26 1,951view

 これは私が大学2年生のお盆の間に、母方の先祖の墓地とその周辺で体験した話だ。私は何かと墓地と縁があるようだ。

 その年は数年ぶりに、母・キョウダイ・私の三人で母の実家を訪れた。久しぶりに伯母とその娘のIちゃん(キョウダイと私の従姉)も来ており、祖父も嬉しそうにしていた。伯母が「来客全員で墓参りに行こう」と提案したが、その時私はなにやら嫌な予感がした。墓参りは慣れたことなのに、こんなことは初めてだった。しかし、今回の訪問の目的の一つが墓参りだったので、私は何も言わずに準備をした。私を含めて5名で墓地にいくので、なんとなく安心感があった。
(大丈夫。何も起こりやしない。)
私は自分にそう言い聞かせ、祖父の家を出た。

 その日は薄曇りだった。溝を流れる水は澄み、流れる音まで美しい。皆で道を歩いていると、右側の重厚な石垣の隙間からたくさんのテッポウユリが背を伸ばし、純白の端麗な顔を向けている。途中で道を右折すると、私達の左手側では、頭を軽く垂れた若い稲穂の群れが風に揺られていた。自然の色鮮やかさと清浄な空気に癒されて、私はやはり来てよかったと思った。
 右手側は石崖になっており、その崖下には大きな家屋が二軒ある。その道の突き当りには、犬を飼っている家もあった。

 その犬のいる家の前を左折すると、右手側には夏草に覆われた土手がある。そして私は、そこで突然に猛烈な寒気に襲われた。

 まるで分厚い雹の塊に全身を包まれたような、強烈な寒さだった。つい今しがたまで、ムンムンムシムシ茹だるような熱気がが流れていたのに。

 私はひどく震えながら、「寒い、寒い!」と助けを求めて叫んだ。あまりの寒冷に歯はガチガチ震え、鳥肌まで立っている。とうとう、私はその場にしゃがみ込んだ。
【何やこれは!私、いったいどうなるの?みんな近しい血縁なのに、何で私だけなんや!】
と、私は恐怖のあまり心の中で絶叫した。

 伯母は立ち止まり、心配そうな目をして、
「〇〇ちゃん(私)、気分が悪いの?」
と温かな声をかけてくれた。

 母は訝しげな眼差しを私に向け、
「『寒い』って、何言っとんの。今はお盆やん。」
と少々冷淡な言葉をかけてきた。
 蝉が雄々しい声で唄うなか、「寒いものは寒い」と母に反論する私の姿はとんちんかんどころか、もはやギャグのように見えただろう。
 キョウダイは「おい、急にどうしたんや。」と言い、私のすぐ隣に来てくれた。
 従姉のIちゃんは快活に笑いながら、
「霊気を感じとるんちゃうん?」
と冗談を言った。

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コメント(1)
  • 沈丁花です。またもや!天候の間違いがありましたので、訂正・一部加筆しました。

    2025/08/08/10:44

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