奇々怪々 お知らせ

不思議体験

SNNNさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ゆびきり
短編 2025/08/08 19:19 2,020view

これは私の妹の話だ。

妹は今年で八歳になる。
ひとりっ子の私にとって、ずっと欲しかった妹だった。

年の差は十三。
親にとっては計画外だったらしいが、私には嬉しい誤算だった。ミルクをあげるのも、オムツを替えるのも、ほとんど私の役目。だから妹は、私にとって半分は妹で、半分は自分の子どものような存在だった。

妹は私を「お兄ちゃん」と呼ぶ。
いくら「お姉ちゃんだよ」と教えても、
「おにちゃんはおにいちゃんなの!」と頑なに言い張る。
そんなところも可愛く思っていた。

だからこそ妹の異変には誰よりも早く気づいた。

あれは妹が六歳、小学校に入って間もない春。
大学から帰ってきて、二人でテレビを見ながらジュースを飲んでいたときだ。

「おにいちゃん、ゆびきりしたもんね」

唐突に、妹がそう言った。

「ん?」

「だから、ゆびきりしたもん。やくそくだよ?」

にっこりと笑うその顔は普段よりも妙に大人びて見えた。
まだ六歳のはずなのに、成人した女が演技で作る笑顔のような歪な表情。

私にはその約束の覚えがない。
けれど子どもの空想だろうと笑って合わせた。

「そうだね、ゆびきりしたもんね」

だが、それは一度きりではなかった。
翌日も、また翌日も──

「ゆびきりしたもんね」
「やくそく、やぶっちゃだめだよ?」

笑い方は日ごとにおかしくなっていった。
目尻が吊り上がり、口角はひくひく震え、笑顔なのに怒っているようにも見える。

ついに我慢できなくなり妹に尋ねた。

「ねぇ、その“ゆびきり”って、いつの話?」

妹は小首をかしげ、無邪気に答えた。

1/3
関連タグ: #テレビ#声#学校
コメント(2)
  • こういった話はよくききます。妹さんはなにかに取り憑かれていたのかもしれません。

    2025/08/10/13:00
  • 前世の記憶…なのか?

    2025/08/13/12:13

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。