「えっとね、せんきゅうひゃく、ななじゅうさんねん」
1973年。
私はもちろん、その年に生まれていない。
まして妹がそんな年号を知っているはずもない。
「……誰とゆびきりしたの?」
声が震えるのを抑えながら尋ねると、妹はにっこり笑って言った。
「おにいちゃんだよ。まえの、おにいちゃん。
いまはべつのおかおだけど、めですぐわかった」
それからも、妹は何度も同じことを繰り返した。
小さな小指を絡め、「ゆびきりしたもんね」と笑いながら。
気味の悪さを感じながらも、ままごとの延長だと自分に言い聞かせた。
──だがある日、妹の部屋で見つけてしまった。
机の上に隠すでもなく置かれた日記。
そこには、小学一年生とは思えない整った字で、こう書かれていた。
「貴方は私との約束を忘れてしまったのですね。
指切りまでしたのに。非常に残念です。
ですから、今世では――」
気分が悪くなり、それ以上は読めなかった。
その夜、母が笑いながら言った。
「あの子ね、寝る前に必ず“おにいちゃん、ちゃんと約束守ってる”って言うの。
あんた、妹に優しいのね。ありがとう」
──違う。
私は何か別の“誰か”がした約束を守らされているだけだ。
そして昨日。
私の勉強机に一枚の紙が置かれていた。
黄ばんだ便箋に鉛筆でこう書かれている。
「次は、絶対に破らないように。
お前だけは、許さないから。」
今夜も、妹とリビングでジュースを飲んでいる。
隣でにこにこと笑いながら、私の手を握ってくる。






















こういった話はよくききます。妹さんはなにかに取り憑かれていたのかもしれません。
前世の記憶…なのか?