俺の言葉を反芻した後、看護師の顔が一瞬曇る。
それから気を取り直すように器具を片付けると、逃げるように無言で立ち去った。
※※※※※※※※※※
その日の夜。
なかなか寝付けなかった俺は病室を抜け出して、フロア中心にある談笑スペースに足を運んだ。
そこは自販機があり丸テーブルがいくつかある、患者や見舞い客用のちょっとした場所だ。
薄暗いスペースの一角に顔見知りの松浦さんが座っていた。
俺は自販機で缶コーヒーを買うと、彼の前に座る。
松浦さんは、
年の頃は多分60代後半くらいで白髪を無造作に伸ばした細身の男だ。
部屋は俺の隣でステージ3の肺がんを患っており、俺よりも数ヶ月前からここにお世話になっているらしい。
松浦さんは恐らく医師に止められているタバコを旨そうに、ゆっくり紫煙を漂わせていた。
「松浦さん、また看護師に怒られますよ」
俺の挨拶代わりの苦言にも、彼は全く意に介していないように「いいんだ」とボソリと呟くと続ける。
「どうせもうしばらくするとお迎えが来るんだから、好きにさせてもらうさ」
いつものセリフだな、、、
苦笑しながら俺はさらに一言言おうと思ったが口をつぐみ手元の缶コーヒーを一口飲むと、検温の時に担当看護師に尋ねた同じことを松浦さんに尋ねてみる。
彼は始めは怪訝な顔だったが、やがて何かを思い出したように口を開いた。
「そういやあ俺がここにぶちこまれた頃合いに、そんな看護師いたな」
「その人ってどんな感じの人だったんですか?」
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