【小学校の心霊事件】 -小学生　朽屋 瑠子-

指摘されたその方向を見て、廣神はしばらく茫然としていたが、
ようやくその重い口を開いた。

「ふたりが幽霊を見れるというのは本当なんだなぁ」

「やっぱり・・・先生とあの霊は何か関係があるの?」

二人を旧校舎の中に入れ、静かにドアを閉めて鍵をする廣神。

「先生?」忍足が先生の顔を見る。

廣神がまるで独り言のようにつぶやく。
「あのおっさんを殺したのは実は私なんだよ・・・」

「えっ?」絶句する朽屋と忍足。

「これでキミらを簡単に返すわけにはいかなくなった。少し付き合ってもらうよ」

「せ、先生!　ボクらに何する気ですか!?」慌てる忍足。そして彼をなだめる朽屋。
「いいじゃない、少し付き合いましょうよ? 　ネ、廣神せんせっ」

「じゃあちょっと、2階まで来てくれるか?」廣神が二人を誘う。

朽屋たち一行が階段を登り始めると、踊り場にいた幽霊も二階へ歩を進めた。

二階に着くと、そこには理科室があった。
椅子も机も既に片付けられており、唯一動かせない流し台だけが残っていた。
廊下側には陳列棚が設けられているが、学習に使えるものは新校舎の方へ移され、今ここにあるのはホルマリン浸けの動物やら、塩素ガスと書かれた怪しい標本の茶色い瓶など、古くて現代教育には似つかわしくないものが放置されたままになっていた。

理科室に入ると、幽霊も一緒に理科室に入り、廣神先生の周りに付きまとっている。

忍足はハッとして口を開いた。
「も、もしかして、廣神先生の『廣神』というのは仮の名前で、本当は『魔神』なんじゃないですか?　そしてその幽霊は、あなたの使い魔なんだ!!」

「なにを言ってるんだキミは」キョトンとする廣神先生。

「確かに『廣神』と『魔神』って、なんか似てるけど~」とあきれ顔の朽屋。

「あれは25、いや２６年前になるか・・・」廣神が語りだした。

「先生、実はこの小学校の卒業生だったんだ。あの日の私たちも、ちょうどキミらのように校舎に出る幽霊のうわさを聞いて忍び込んだんだ・・・」

深夜０時。家を抜け出して集まった４人組がいた。ガリ、ぐっち、おっさん、そして廣神少年の４人組だ。彼らは理科室にある人体模型が夜な夜な校舎内を走り回っているという噂を確かめるため、鍵のかかっていない体育館横から侵入し、理科室へと向かったのだ。

そこで本当に動く人体模型と遭遇し、逃げまどう４人。が、おっさんが逃げ遅れてしまった。
ガリとぐっち、廣神少年の３人はなんとか逃げ伸びたのだが、翌日用務員さんがおっさんの遺体を理科室前で発見し、警察ざたとなった。おっさんは内臓を抜かれて死んでいた。

残されたガリ、ぐっち、廣神の３人はおっさんのカタキを討つため、昼間のうちに人体模型を外に連れ出し、河原で燃やすという作戦に出た。３人は見事人体模型の魔物を退治したのだが・・・それ以来、おっさんはこの学校に憑りつくようになってしまった。

「だから・・・おっさんの霊を弔うために、私はこの学校への赴任を願い出たんだ」