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呪い・祟り

yukiさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

僕はこれから『呪われた撮影現場』を実況することになる
長編 2025/05/16 15:36 12,637view
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僕ら四人は、息を潜めながら、二階に向かう階段を登る。
登った先にある、一つのドア。
何の変哲もない、ドア。
僕らは、そのドアの前に辿りつく。
カトウさんが、ゴクリと唾を一つ飲み込み、ドアノブに手をかける。
ドアノブに触れた手に、力がこもる。
だが。
ドアは開かない。
当然だ。
開かずの間、なのだから。
恐怖と、ほんの少しの期待の消失に、僕の力が抜ける。
僕は自分の掌にジワリとした感触を覚えて、自身の掌を見つめる。
知らず知らずのうちに握りしめていたその手は、汗でぐっしょりと湿っていた。
ドン!
突然、硬いものを叩く音が聞こえた。
「何よ、期待はずれもいいとこだわ!」
ミキさんが、ドアを蹴飛ばしていた。
「ちょ、ちょっと、ミキさん、止めようよ。」

ミキさんの行動を、マナミさんが止める。
その時だ。
僕の背中に、冷たい感触がする。
いや。
感触ではない。
言わば、
視線が突き刺さる。
そういう感覚だった。
僕は、後ろを振り向く。
その瞬間。
世界から音が消えた。
廊下の先に、ナニカある。
僕は目を凝らす。
30センチ程のナニカ。
よく見れば、それは、人形だった。
赤茶けた着物を着た、一体の日本人形。
それが、僕を見つめている。
赤い眼で。

口を真一文字な線のように閉じ、
無表情で。
その時。
真一文字の線が、開いた。
口が、薄く開いた。
開いた口の両端が、歪んだ。
笑っているのだ。
それは、笑って僕を見つめているのだ。
「ねえ! 君!」
僕は、マナミさんの言葉で我に返る。
音が戻る。
世界が戻る。
僕の視線の先に、人形はいない。
立った今、登ってきた階段があるだけだ。
「大丈夫? ぼーっとしてたよ。」
僕を心配する、マナミの声。
「だ、大丈夫ですよ。」
そう返事をする僕の背中を、冷たい汗が流れた…。

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