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呪い・祟り

yukiさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

僕はこれから『呪われた撮影現場』を実況することになる
長編 2025/05/16 15:36 12,635view
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モキュメンタリー映画『括リ姫』のストーリーは、こうだ。
怪奇現象の特集番組として、括リ姫の出る屋敷を撮影することになり、カメラマン(カトウさん)と女子アナウンサー(マナミさん)の主演二人と、盛り上げ役の女性芸能人二名(ミキさんと年配の女優)が、屋敷に侵入する。
ところが奇妙な現象が起き、屋敷から逃げ出す事になる。だが、脱出の途中、なぜか扉が開かなくなり、カメラマンとアナウンサーが屋敷に閉じ込められる。
閉じ込められた二人に、更なる怪奇現象が襲いかかる、という展開である。
そしてストーリーの最後に、再度屋敷に足を踏み入れた女性芸能人二名や監督(年配の男優)撮影関係者が見たのは、変わり果てた姿で首を吊る、カメラマンとアナウンサーの2人だった、という、ありがちな内容だ。
本当の怪奇スポットを使ってのモキュメンタリードラマ。
それがこの新作ドラマの謳い文句だった。

監督が、屋敷の玄関の扉に手をかける。
鍵がかかっている事を確認すると、年配の女性スタッフを呼びつけ、鍵を受け取る。
後から聞いた話だが、その鍵は、管理上は屋敷の持ち主になる、屋敷の元の主の遠い親戚にあたる人間から借りてきたそうだ。
監督が、その鍵で玄関の扉を開ける。中からカビ臭い空気が漏れ出した。
関係者全員が、屋敷の中に入り、玄関ホールに並ぶ。
皆、表情が優れない。

監督は、皆を見回した後、
「さぁ、撮影を始めよう。」
と、陰鬱な気を払うように喝を入れる。

そして、撮影が始まった。
監督の指示のもと、落ち着いた雰囲気で撮影は進んでいく。
その時は、怪奇現象なんて起こる様子はなく、屋敷は不気味ではあったが、別段恐怖を感じるようなこともなかった。

「なあ、君。」
撮影の合間、カトウさんが僕に声をかけてきた。
「どうしましたか?」
「うん。実はね、この先にある階段。それを登った先に…」
「はい。」
「…例の、開かずの間があるんだ。だから、行っちゃ駄目だよ。」
どうやらカトウさんは僕に注意を促してくれているようだ。

「ありがとうございます。そうしておき…。」
と、そこに、
「なになに、上に何があるの?」
女性の声が話しに割り込んできた。
僕は声の主に目を向ける。
そこには、偶然、僕らの近くを通りかけたマナミさんとミキさんがいた。
さっきの声は、ミキさんから発せられたものだ。
「…。」
カトウさんは、渋々、ミキさんに開かずの間の事を話す。
「わー、行ってみたーい。」
「えぇ、止めましょうよ。」
隣りのマナミさんがミキさんを引きとめる。だが、
「いーじゃん、減るもんでもないし。」
ミキさんの勢いに負け、僕とカトウさん、ミキさんとマナミさんは、二階の開かずの間を目指す事になった。

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