広い玄関口には一足の靴もない。
正面には受付カウンターらしきところがあるが、誰もいない。
ただカウンター前の床には、
「第○会S小学校6年3組同草会会場はこちら↑」
と書かれた縦型の黒板が立て掛けられている。
どうやらここで間違いないようだ。
それでスリッパに履き替えた。
━もしかして俺が一番乗り?
などと戸惑いながらも、まっすぐ廊下を進んだ。
廊下沿いにドアが並んでいる。
目的の会場は一番奥にあった。
見るからに重々しいドアには「第○会S小学校6年3組同草会会場」と書かれたプレートが貼られている。
彼は少し緊張しながらドアノブを下げると、ゆっくり開いていった。
※※※※※※※※※※
さとるの視界にテニスコートくらいの広さの室内が広がる。
全体にどこかどんよりしたセピアな空気が漂っていた。
敷き詰められているワインカラーのカーペットのあちこちには、4人掛けのテーブルがいくつか適当に配置されている。
何人かの男女がテーブル前に座り、なにやら楽しげに談笑している。
彼らの姿を見てさとるは少し違和感を覚えた。
━父がもし生きていたらとうに70を過ぎているのでここに出席している者もそのくらいのはずなんだが、視界に入る男女はもちろんそのくらいの見た目の者もいるが、30代や50代、20代に見える者までいる。
疑問を抱きながらもとりあえず彼が入口近くのテーブルに座ると、
「おお、秋山、久しぶりだなあ」と背後から声がした。
振り返ったとたんドキリとした。
くたびれたジャケットを羽織った男が満面に笑みを浮かべて立っている。
40過ぎくらいのその男は白髪混じりの髪を七三に分け、げっそり痩せこけている。
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