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そこでさとるはハガキの同窓会に行ってみようと思った。
日付は今度の日曜日だ。
その目的の一つは、
毎年せっせせっせと律儀にハガキを寄越してくる主催者の人に父はもう他界しているということを教えてあげること、
それともう一つは、
そこに出席している人たちに昔の父がどんな子供だったかを聞きたかったということ。
というのは父が亡くなった時、彼はまだ幼く父に関する記憶がほとんどなくて、その人となりに興味があったからだ。
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晴天の夏の日曜日、さとるは出かける。
同窓会の会場は、S市内の繁華街外れにあるホテルということだった。
地下鉄をおりタクシーを拾い運転手にホテル名を告げると知らないと言われたので、住所を伝える。
そして近辺と思われる路地で降ろされた時、時刻は午後6時を過ぎようとしていた。
同窓会のスタートは午後6時30分。
そこは賑やかな繁華街から少し外れた場所で住宅や商店がポツンポツンとしかない。
何か生気の感じられない寂しげな一帯が薄闇に沈んでいた。
━こんなところに会場があるのか?
などと思いながらさとるが携帯のナビを辿りながら薄暗く狭い路地を進んでいくと、道路突き当たりに忽然と古びたビルがあるのがボンヤリ見える。
それは今にも壊れそうな五階建てくらいの建物。
ビルの袖には「ビジネスホテル○○」と、汚れた看板がある。
━ここか?
と思いながら彼は門からホテル敷地に足を踏み入れた。
建物正面には五台は停められる駐車スペースがあるが、何故か一台の車も停まっていない。
訝しげに思いながら入口ドアを開いた。
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