しかし、3時間ほど待ったが全く帰ってこない。他の皆は戻ってきたが先輩のトラックだけは指定の時間を過ぎても帰ってこなかった。
先程の件を聞いていた上司はおかしいと感じたのか社長と連絡を取り、事態を伝えているようだった。トラックにはGPSが付いているはずだが、履歴を見ると道の駅を出て数km走った先で不可解にも途絶えていると。他の社員にも会ってないか確認し配送先にも聞いてみたが全く行方が分からなくなってしまった。
戻ってきた社長が警察に社員とトラックの行方が分からなくなったと連絡していた。お兄さんは関係者なので残ることとなり、他の社員や事務の方は上司が帰宅させたようだった。
警察が来てからはお兄さんは何があったのかを説明していた。上司と社長はGPSの履歴をパソコンで警察と確認していたが警察官と「この先って〜です?」「はい、トラックが入れる道幅じゃないです。」「そうですよね。なんでこんなとこに入れてるのか…」と話している内容が聞こえた。
地名が少し聞こえたが、かなり山に近く狭い道のある集落で大型トラックなど入れるような場所ではなかった。
しばらく聞き耳を立てていると上司と警察より帰宅しても大丈夫と話があり、先輩が心配だったが帰ることとなった。公休もあったため2日間会社を休みになっていたが休んでいる間もどうなったのか心配で仕方なかったとの話だった。
後日、会社に出勤をすると蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。何事かと思ったが先輩のトラックが県外で見つかり、社長が確認しに向かっているとのことだった。しかし、発見場所がおかしいと社長がボヤいているのを誰かが聞いたらしくその社員いわく「国道○○号の周辺の山道らしい。ただ、その道調べたらトラック通れるような場所じゃなかったぞ。」と話しており何故そんな所に…とみんなが疑問に思っていたその時だった。事務室から社員が飛び出してきた。
「○○さん(先輩)から電話!今、繋がってる!!」と。社員が一斉に事務室に押しかけた。事務にいる上司が「○○か!?聞こえているか!?」と大声を出していた。事務さんは警察に連絡をとっている様子だった。繋がったままなら逆探知とかができるのではと希望を抱いた。その時「あ、携帯を拾ってくださった方ですか!?すみません、どこでこの携帯を〜」と言ったところで上司の言葉が止まった。
急に上司がよろめき、受話器を落としてそのまま倒れた。その場にいた皆が驚く。すると誰も触っていないのにスピーカーホンになり、女性の声で「〇〇君って男の子がいたら電話出てくれないかしら?居なかったら他の男でいいわ。」
何故、自分の名前が呼ばれているんだ?電話の相手は一体誰だ?なぜ上司が気絶したんだ?と疑問が次々と浮かんできた。混乱していると社員さんから肩を叩かれ「〇〇(お兄さんの苗字)、はよ出ろ。お前呼ばれてるんだから…頼むよ…」と青い顔で懇願された。
社員さんに言われたからではないが、何故かこの女性と話さなければならないという気持ちになっていた。
「もしもし…お電話代わりました。〇〇です。」
女性「あら、〇〇君?私の声、聞き覚えあるかしら?道の駅でお話したんだけど覚えてる?」
「はい、覚えております…」
女性「あら、嬉しいわ。あの男はちょっと元気が良すぎたわねぇ。」
「あの…色々と聞きたいことがあるんですが。」
女性「ええ、どうぞ。ちなみに上司さんはうるさすぎたから黙ってもらっただけよ。声が大きいんだもの。」
女性はクスクスと笑っていた。
「単刀直入に聞きますが…先輩はどうなったんですか?」
女性「あぁ、あの男?さっき言った通り元気が良すぎたのよねえ。血気盛んなのはいいけど粗野な男だったから程々にしたわ。うるさかったからそのまま転がしておいたわよ。」
「さっきから何を言って…」
女性「〇〇県の〇〇市。場所的には〇〇町ってところね。山の中腹あたりかしら?その辺にトラックと一緒に転がしておいたわ。」
「は?そんな馬鹿なことが」
あるいはこの女性はサキュバスか何かなのでしょうか?