友人の末路

私には行方不明になった友人がいる。その友人から聞いた話と、友人が行方不明になる前に体験したことを書いていく。

友人はドライブやらラーメン屋巡りが趣味で休みの日にあちこち走り回ってた時期があった。
タバコを喫煙所とかで吸ってる時、銘柄が珍しいためか喋りかけられてトラックやタクシーの運転手さんとお喋りすることがあった。
この話は同じ時間帯に来る仲良くなった、元トラックの運転手だったお兄さんから聞いた話だそう。

その方は運送会社で働いてた。

最初はいつも通りの世間話だったんだが、前日にやっていたテレビでホラー特集があったことで怖い話をしてくれた。友人がさりげなく聞いた、「お兄さんはどうしてこの辺で働き始めたの？｣という答えがこの話だったそう。

以下はお兄さんの話

その日の配達が終わって道の駅で休憩していたら、同じ会社のヤンチャな先輩が声をかけてきた。

話の内容としては今日の配達でムカついたことがあったとかパチンコで結構玉が出たから儲かったとかそんなこと。

2人で話してたらお腹がすいたので併設されてるレストランでご飯を食べたんだ。

食後にタバコを吸いに外に出たら喫煙所で綺麗な女性がいたらしい。モデルか芸能人か！？って思うくらいには綺麗で魅力的な女性だったそう。2人ともおしゃべりしながらタバコを吸ってたけど、自然に視線が向いてしまうくらいに目を引きつける魅力があったそう。お互い、めっちゃタイプだと盛り上がったそうだ。

女性も視線に気づいたのか「こんばんは、お仕事大変ですね〜」と話しかけてくれたので3人で世間話をしていたら先輩が「お姉さんモデルさんか芸能人さんですか！？めっちゃ綺麗です！めっちゃタイプ！！」と猛アタックをし始めた。

先輩にさりげなく「あんまり言いすぎるとセクハラになりますよ(笑)」と軽く釘を刺すがもうおしゃべりが止まらない。女性は「大丈夫ですよ〜」とニコニコしていたが内心迷惑かけてるかもと思い、先輩にお土産選ぶんで一緒に来てくださいとほぼ無理矢理だが引き離す形になった。
先輩はブーブー言っていたが会社にクレームとか入ったら大変ですよと言うと不満そうな顔だが「仕方ねえなぁ〜！」とまあ、納得はしてくれてるようだった。

お土産選びという名目の買い物を終えて外に出ると先程の女性が困った顔で辺りを見回してウロウロしていた。
何かあったのかと思い、声をかけようとしたが先輩の方がダッシュで行ってしまった。

追いついてから声をかけると、どうやら待ち合わせをしており、車を運転している友人から連絡があって故障で迎えに行けなくなってしまったとの話だった。タクシーを利用しようにもなぜか電話が繋がらず困っていると。

そんな話を聞くや否や先輩が「オレ、お姉さんのこと送りますよ！トラック入れる道があれば近くまで行きます！」と意気揚々と言い始めた。
どこの会社もそうだろうが他所の人間をトラックに乗せるのはNGだ。ウチの会社はトラブルを避けるため少なくともバックパッカーとかは車に乗せてはいけないことになっていた。
先輩に伝えるが「地名聞いたけど、ここから10分もかからんとこだから大丈夫！すぐ送ってくる！」と聞く耳を持たず。
乗り込もうとする女性に伝えようとするも先輩がガードして近寄れず。いつもより強情なのが気に触ったが先輩は「大丈夫だからさ？な？頼むよぉ〜」とテヘペロみたいな表情をしてお姉さんを乗せてしまった。

女性は窓から「お兄さんもお時間をいただいちゃってすみませんでした！ご親切にありがとうございました！」と笑顔で頭を下げていた。
ここまで来たら止まらないのが先輩の悪いところだった。運転席側に向かうと「じゃ、すぐ行ってくるわぁ！オレはお姉さん送ったら会社に戻るぜ！」と発進して道の駅から出ていってしまった。

これがお兄さんと先輩との最後の会話になった。

会社に戻ってから何かトラブルがあっても困ると思い、道の駅の出来事を上司に伝えたところ、上司は「自分たちや会社を守るためにそういう決まりがあるんだよね。2回目だし、これはキツく言わないと彼（先輩）のためにならないな。」
と先輩が帰ってくるのを待っていた。