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ヒトコワ

Mineさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

にぎやかな4人組
長編 2025/02/05 23:47 145view

私とカオリは別々の高校へ進学し、たまに連絡を取り合う位で以前ほど頻繁に交流することもなくなりました。
それから私は大学進学を機に地元を離れ上京し、そのまま都内で就職しました。
右も左も分からない社会人一年目として慌ただしい生活を送っていた頃、地元中学校の同窓会の案内状が届きました。その葉書を読んでいる内に4人で過ごしたあの日々が思い起こされ、郷愁の念が胸を締め付けてきました。ここしばらく地元に帰ってないし気分転換に丁度良いと思い私は参加を決めたのです。
会場は市内のホテルでざっとみて参加者は40人近くおり、皆お酒を片手に思い思いに談笑していて懐かしい当時の顔ぶれの中にはあのカオリもいました。当時の4人組の中ではカオリは派手目な方でしたが、久しぶりに見る彼女は随分落ち着いた清楚な印象で、現在は公務員として地元の役所で事務をしているとのことでした。
久しぶりの再会にテンションが上がりお互いの近況をひたすら語り合い一段落した頃に話題はいつも4人で遊んでいた中学生の頃に移りました。一通り思い出話に花を咲かせた後、「本当にキョーコとミキは残念だよね。まさかあんなことになるなんて・・・」
しんみりしながら私がそう言うと、カオリはニヤニヤしながら「ああ、アレねぇ」と何か含みのある返事をしました。
私が訝しんでいるとだいぶお酒が入り出来上がっている彼女は相変わらず何がおかしいのか分からない不敵な笑みを浮かべています。
「どうしようかなぁ。・・・ンフフ・・・もう時効だろうし言っちゃってもいいかなぁ・・・ねぇ、誰にも言わないって約束できる?」
一体何の話をしてくれるのか興味を引かれた私は頷くと、カオリは顔を寄せてきて声を一段落として話し始めました。
「キョーコが屋上から飛び降りて自殺した事件ね、あれ実は自殺じゃ無いんだよね。あれはね、やっぱり単なる事故だったの」

訳が分からず私が次の言葉を待っているとカオリは満足そうに更に目を細めて笑いました。
「ほら、キョーコの机から遺書が出てきたでしょ?ミキにいじめられてたっていう。あの遺書、誰が書いたと思う?・・・私よ、私」
私が言葉を失い唖然としていると彼女はお構いなく一気呵成に話し続けました。
「私ミキのことあんまり好きじゃ無かったんだよね。人を見下すような喋り方するしいつもいつも私のやることなすこと全部ケチつけてきてさぁ。もうウザくてウザくて。だからね、いつかミキに一泡吹かせてやろうって日頃考えてて。そしたらキョーコが屋上から転落する事故が起こったっしょ?これは使える!って思って。キョーコの筆跡を真似て遺書を書いてさ、キョーコの机に忍ばせておいたの。それにしてもあんなに上手くいくとはねぇ。転落してくれたキョーコには感謝しなきゃ、なーんて。アッハッハ!・・・あ、でも私だってやりすぎたとは思ってるよ?だってあそこまで大事になるなんて思わなかったし。ちょっと悪ふざけのつもりだったんだけどああなると流石に冗談でした、なんて言い出せないしさ。まさかミキが村八分になって転校する事態になるなんて思わなかったもん。可哀想な事したなって反省してるよ」
衝撃的なカオリの告白に私はどう返せばいいか分からず、「そうなんだ・・・」と馬鹿みたいに答えるのがやっとでした。
それからは他の同級生達も交えて他愛もない話をダラダラ続けた後同窓会はお開きとなり、私はタクシーで帰りました。
ところで私とカオリが二人で会話している最中、会場の外からずっと私たちを睨み付けている一人の女性がいましたがカオリは気付いていなかったようです。化粧気も無く病的なまでに痩せ細り、けど目だけは爛爛と不気味に光っていて、明らかに異様な雰囲気を纏っていましたがいつの間にかにはその女性は姿を消していました。
今にして思えばあの人、昔の面影は全くありませんがミキだったのかもしれません。
なんとなく、ですが。

さて、同窓会から数ヶ月経ち仕事に精を出していたある日のこと、またもや私の心を揺るがすニュースが飛び込んできました。

カオリがひき逃げに遭い大怪我を負ったのです。
夜、帰宅途中にカオリはヘッドライトを点けずに走行してきた車に後ろからはねられました。カオリをはねた車は前方で一旦停止し、すると今度はバックして地面に倒れているカオリの両脚を轢いた後、更に発進させてダメ押しのようにカオリの両脚を再び踏み潰し、その後猛スピードで走り去っていきました。念入りに潰された両脚は手の施しようが無く、結局切断するしか無くなりました。現場は人気の無い路地で目撃者もなければ監視カメラも無く、もちろん車種やナンバーを確認する余裕がカオリにあるはずもなく、犯人は未だに捕まっていません。
最初にお見舞いに行った際、カオリは絶望に打ちひしがれた表情でベッドに横たわっていました。私の前では笑顔を見せ気丈に振る舞っていたけれど、両脚の膝から下が無くなった彼女の姿を見る度に私はやるせない思いで胸が苦しくなるのでした。
早く犯人捕まるといいね、なんてよく話してましたが、犯人は”あの人”じゃないかという予感めいたモノはありました。とはいえもちろん何の証拠も根拠も無く、単なる妄想の域を出ないので決して口にはしませんでしたが。
それから定期的に私はお見舞いも兼ねてカオリの元を訪ねていましたが、残念ながらカオリは私の知らない内に亡くなっていました。人づてに聞いた限りですがある大雨の日に一人で出かけて車椅子ごと川に飛び込んだらしいのです。
あのお調子者のカオリに似合わない、悲しすぎる最期でした。

こうして、かつてのメンバーは私の周りから皆いなくなってしまったのです。
時は流れ現在、私は職場で今の主人と出会い二人の子供の母親になりました。
もうすっかり所帯染みた40代半ばの私はそれなりに平穏に過ごしていますが暇を持て余した時にはよくこうしてあの4人ではしゃいでいた遠い日々に思いを馳せることがあります。
大人になってもこのメンバーで集まろうなんて話をしていたのにキョーコとカオリは亡くなりミキは消息不明なんて、こんな辛い現実を誰が予想できたでしょうか。いやミキも既に他界しこの世にいないような、そんな気さえするのです。

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