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不思議体験

マチノスケさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

非ずの間
長編 2025/01/02 11:25 1,564view

 ──消えていた。

 戸がなかった。いや、それどころか何もなかった。
 昨日祖母と話した時、たしかに部屋があったはずの場所には。
 ざらざらした、黄土色の土壁しかなかった。

「こんな所にいたの、何してんの」

 後ろから祖母の声が聞こえた。

 いつの間に来たんだろうか。

 恐怖で固まっていた私の身体は、操られるように祖母に向き直って。

 気がつけば口が勝手に動いて、震える声でこう聞いていた。

「ここって部屋……なかったっけ」

 すると、また祖母は昨日のようにキョトンとして。
 でも少し薄ら笑いを浮かべたような表情で、こう言った。

「……そんな部屋、最初からないよ」

 その後のことは、よく覚えていない。多分そのまま戻って、普通に両親と帰ったんだと思う。あれから祖父母の家には行っていないけど、その後なにか起こることはなかった。両親は相変わらずだし、祖父母も元気にしている。電話とかメールとかの連絡も、普通に取り合っている。でもそのことが却って、あの日の記憶をより一層異様なものにしている。結局……どこまでが本当にあったことなのか、あの部屋はなんだったのか、今でもよく分からないままだ。もしかしたら、全部が白昼夢のようなものだったのかもしれない。記憶が徐々に曖昧になってきて、そんな気さえしてくる。「もうこのことは忘れろ」ということなのだろうか。

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