非ずの間
投稿者:マチノスケ (16)
長編
2025/01/02
11:25
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戻る時、ちらっと振り返った。
一瞬だったけど、はっきり見えた。
たしかに閉まっていたはずの戸が、少し開いていた。
布団にもぐったあとは、頭の中がぐちゃぐちゃに掻き回されるような気持ち悪さが襲ってきた。昼間とさっきの出来事が脳裏にこびりついていて離れなくて、何が本当のことなのか分からなくなって。次起きた時には……自分の知っている他のありとあらゆることが、訳の分からないものになっているんじゃないかって。とてもじゃないけど、眠れたものではなかった。でも……ここに来るまでの長旅で疲れていたのもあって、いつの間にか寝てしまっていた。
目が覚めた時にはとっくに朝になっていて、両親が帰る支度をしていた。夜中に布団の中でガタガタ震えていたのが嘘みたいに、穏やかで平和な朝だった。皆んなで朝食を食べて、また少し喋ったりした。それから玄関先で挨拶を済ませて、あとは帰るだけになった。
きっと、夜中のことは夢だ。
きっと、部屋の話も私の勘違いだ。
そう思い込めばよかったのに。
そのまま、帰ればよかったのに。
どうしても、受け入れることができなかった。
私は「居間に忘れ物をした」と嘘をついて。
吸い寄せられるように、またあの部屋に行ってしまった。
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