非ずの間
投稿者:マチノスケ (16)
怖いというよりは……ただ不気味で、不可解で。
今でもずっとモヤモヤしてる、そんな話。
何年か前の夏。両親と共に、遠く離れた田舎にある祖父母の家へ泊まりに行った時のこと。どういう成り行きだったのかは覚えてない。社会人になってからは初めての訪問で、たぶん十年ぶりくらいだったと思う。絵に描いたような大きい日本家屋である祖父母の家は、最後に行った時とほとんど変わっていないように見えた。車で行って午前中のうちに着いたあと、みんなで喋ったりテレビを見たりして。ひとしきり落ち着いて手持ち無沙汰に携帯をいじっていた時……ふと、思い出したことがあった。
あの部屋って、どうなってるんだろう。
祖父母の家には、この手の話によくありがちな「開かずの間」みたいな部屋があった。木製の引き戸がついている、いかにもな外見をした部屋。祖母曰く「もともと物置として使っていたけど、戸の立て付けが悪くなったせいか突然開かなくなった」とのこと。特に大事なものが入ってたわけではなかったから、そのまま放っておいてるんだそうだ。別に変なこととか不幸なことが起きたわけでもなく、ただそれだけの部屋だと聞かされていた。そして記憶が正しければ、その部屋は少なくとも最後にここに来た時点では開いてないままだった。思い出深い部屋でもなんでもないし、見に行ってどうするつもりもなかったんだけど、一旦思い出すと妙に気になってしまった。場所は何となくだけど覚えていたから、私は「トイレ行ってくる」と嘘をついて、みんながいる居間を抜け出してその部屋へ向かった。
──開いていた。
ずっと開いてたんじゃないかってくらい、自然に開いていた。
ただ……戸は開け放たれていたんじゃなくて、絶妙に中が見えないような半開きだった。まるで誰かが部屋を覗こうと開けて、そのまま閉め忘れたみたいな。祖父母の家が古い日本家屋だから全体的に薄暗いのもあって、今思えばすごく不気味な雰囲気だった。でも、その時の私は怖いというよりも「あ、開くようになったんだ」っていう気持ちしかなくて。それで……何が置いてあるんだろうっていう単純な好奇心が湧いてきて、私は隙間に顔を近づけて中を覗き見たんだ。
……………
「何してんの」
私はびっくりして叫びそうになった。
いつの間にか、祖母が後ろに立っていた。
私は慌てて「いや、ここ開いてたんだなって。ほら、ここ物置だったけど開かなくなったんでしょ?」みたいなことを言ったと思う。でも祖母はそれを聞くとキョトンとして。
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