慧理命
投稿者:セイスケくん (29)
短編
2024/11/18
21:26
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慧理命はしばらく沈黙し、橘を見つめていたが、やがて薄く微笑んだ。
「未来を知ることは大きな力を与えよう。しかし、それは同時に重い代償を伴うものだ。」
橘は目を伏せながらも毅然とした声で答えた。
「覚悟の上です。」
慧理命が手を差し伸べると、青白い光の中から一冊の古びた巻物が現れた。
彼はそれを机の上にそっと置いた。
「この巻物には、これから一年間の出来事が記されている。だが、汝が読む限り、その代償を避けることはできぬ。」
慧理命はそう言い残し、再び青白い光とともに消えた。
橘は息を整えながら巻物を広げ、その中身を読み始めた。
そこには、来年の株式市場の動きや経済動向、自然災害の日付、さらには日本ダービーで優勝する馬の名までもが詳細に記されていた。
橘は震える手で次々とメモを取っていく。
深夜、ホテルのスタッフが部屋を訪ねた。
「何かお困りのことはございませんか?」
「いや、大丈夫だ。ただ一つ、覚えておくといい。今年のダービーで勝つ馬はこれだ。」
微笑みながら一言を残した橘の姿は、どこか自信に満ちていた。
しかし、巻物の最後のページをめくった瞬間、橘の表情が凍りついた。
そこには大きな文字でこう記されていたのだ――
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