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不思議体験

セイスケくんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

夫の影
短編 2024/11/16 11:47 99view

車に乗り込み、エンジンをかける前に何気なくビルを振り返った。

その瞬間、全身の血の気が引いた。

3階の窓際に、もう一人の夫が立っている。

こちらをじっと見つめるその姿は、明らかに異質だった。

窓の向こうで動かずに立つ彼と、隣に座る夫。一体どちらが本物なのか。

助手席の夫に恐る恐る目を向けると、彼は硬い微笑みを浮かべたまま、ゆっくりとこちらを見返した。

その瞳には光がなく、まるで深い闇を覗き込んでいるようだった。

「どうしたの?」彼の口元だけが動き、声が耳元で響く。

しかし、その声が隣の夫から発せられたものなのか、それともビルに残されたもう一人からのものなのか、もはや判断がつかなかった。

恐怖が頂点に達し、私は車のドアを開けて外に飛び出した。

遠くで警察のサイレンが鳴り響く。振り返ると、車の中には誰もいなかった。

ビルの窓を見上げると、人影は消えている。全てが幻だったのか。しかし、胸に残るこの不安感は消えない。

震える手でスマートフォンを取り出し、夫に電話をかけた。

すると、すぐに彼の声が応答した。

「もしもし、どうしたの?」

「今どこにいるの?」声が震える。

「まだオフィスで仕事してるよ。もう少しかかりそうだ」

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