火男【ひょっとこ】
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/10/01
07:05
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人なんかがいれば、絶対に気付くはず。
すると再びメッセージ。
……ねぇ、ねぇ、お姉さん、そっち行っていい?
─え?
直ぐに「ダメだよ」と打つ。
するとすぐに「どうして?」と返ってきた。
震える指先で返信する。
だって私カズヤくんのこと、よく知らないし。
だがこのメッセージを最後に交信は途絶えた。
しばらく私は画面をにらんでいたが、いつまで経っても既読がつかない。
終いには枕元にスマホを置くと布団を被り目を瞑る。
しばらく何度となく寝返りを打ち、眠ろうと頑張るが、ダメだった。
どうしてもカズヤくんや「ひょっとこ」のことが気になって、眠れないのだ。
時刻はもう3時になろうとしていた。
とうとう私は眠るのを諦めると、電気を点けベッドを降りパーカーを羽織ると部屋を出た。
※※※※※※※※※※
マンションの敷地を出ると、人気のない歩道を歩きはじめた。
辺りはまだ薄暗く、灯火といえば街灯の光と頭上彼方で妖しく瞬く白い月だけだ。
しばらく歩いていると小さな公園が見えてきたから、立ち寄ってみる。
片隅にあるブランコに座りぼんやり前後していると、何処からだろう何か景気の良い演奏が聞こえてくる。
私は止まり、うつむき意識を耳に集中した。
それは幼い時、祭りの時に鳴っていた笛や太鼓の懐かしい音色。
ふと顔を上げると10メートルほど前方に、誰かがこちら向きに立っている。
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早速のコメントありがとうございます。
━ねこじろう