ご愛読ありがとうございました。

Yさんがブログにコメントを書き込むようになって4ヶ月を過ぎる頃、ついに投稿がぱったりと止まった。一週間が過ぎ10日が過ぎても新しい日記が投稿されず、それから一ヶ月経った時、ようやくブログが更新された。
新しい日記のタイトルは｢ご報告｣となっている。
何か不穏な雰囲気を感じ、その記事を開く。
内容はYさんが予想した通りで、エリカではなくエリカの母が代筆した物だった。

要約すると
・エリカは亡くなったこと
・葬儀には沢山の友人が参列してくれたこと
・多くの方に愛されて娘は幸せだったこと
それらが簡潔な文章で淡々と綴られていて最後はブログの読者に対する感謝の言葉で締められていた。コメント欄にはお悔やみの言葉が並んでいる。

何度読み返しても死因に関する記述は見受けられなかった。
不慮の事故か、じゃなければ病気か。
なんにせよ順風満帆だったのに人生というのは一寸先は闇、何が起こるか分からない。
Yさんは単に娯楽の為にエリカを攻撃していただけで本気で彼女を憎んでいたわけではない。
この訃報を受けて喪失感が沸々と湧き上がり、
Yさんもコメント欄に〈まだお若いのに残念です。ご冥福をお祈りします〉と書き込んだ。
そしてブックマークに登録していたエリカのブログサイトを削除した。

次の日、Yさんはいつものように会社へ行き仕事をして帰宅し、家事を済ませそして就寝前にお気に入りのサイトの巡回をしていた。
そろそろ寝ようかと思った時、画面上にメールの受信を知らせるポップアップが表示された。

受信トレイを確認すると一通のメールが届いている。しかし、どこの誰から送信されたのかが分からない。
というのも送信者の情報がどういうわけか

〈縲ゅァ?繧ﾌ◻︎遘↑ 繝ｦケ縺ｯ⬜︎〉

みたいに文字化けしていて判読できなかったからだ。こんなのは今まで一度も見たことない。
ただ、件名の部分はちゃんと日本語で

〈ご愛読ありがとうございました〉

と入力されている。
本文には文章が無く、画像ファイルだけが一つ添付されているだけ。
開かない方が良いと本能が警告していたが、既にカチカチとダブルクリックし画像を表示させていた。

沢山の花に囲まれて青白い顔で眠る、棺桶の中のエリカを真上から写した写真だった。

｢うわっ｣