熊被害の実体験
投稿者:とくのしん (65)
ガサガサと前方の茂みが大きく揺れた。距離は30m程度、またシカでも出たかと思っていると
目の前に現れたのは大きなヒグマだった。
その圧倒的な存在感を目の当たりした瞬間、大きく一度心臓が脈を打つのが分かった。私たちに視線を向けゆっくりゆっくりと一歩一歩近づいてくる。そしてヒグマは歩みを止め、私たちをじっと見つめて始めた。距離は20m程度だろうか、私たちを見つめる瞳は一点の曇りも敵意の欠片もないまるで黒い宝石のようだった。あれほど純粋無垢な眼差しを私は向けられたことがない。だからその瞳に魅入られるような感覚すら覚えた。
横目でふと見た滝田はというと、大粒の汗が頬を伝わっていた。大きく肩で息を繰り返し、両手をトラックの荷台にかけていた。どれほど熊と視線を交えていただろうか、熊は唐突に二本足で立ちあがるとクンクンと臭いを嗅ぐようにあたりを見回した。
立ち上がった熊を目の当たりして、一気に恐怖が湧きあがった。再度、滝田に視線を移すと彼は熊に悟られないようゆっくりと猟銃に手を伸ばしていた。そして猟銃を手にすると着ているベストの胸ポケットから弾をゆっくりと取り出した。滝田は熊から視線を外すことなく、猟銃に弾を一発込めたあとに熊に銃口を向けた。
一方熊はというと、さっきまで見せていた臭いを嗅ぐような仕草はやめ、二本足で立ったままこちらを凝視していた。が、先程と違いその瞳から明らかに敵意を感じ取ることができた。滝田は微動だにすることなく銃を構えている。
「いいか、そのままゆっくりと車に乗り込め。ドアを閉めて音を立てるなよ。無事乗り込めたら運転席のドアをゆっくり開けてくれ。もし車に乗り込んだあと熊が向かってきたら躊躇せずドアを閉めて決して開けるなよ」
滝田は熊に視線を向けたままそう小声で私に指示した。私は黙って頷くとゆっくりと車に乗り込んだ。熊を刺激しないよう本当にゆっくりと。無事に車に乗り込んだあと運転席のドアハンドルに手を掛ける。ゆっくりと引いてなるべく音を立てないように開けることができた。
運転席のドアをゆっくりとゆっくりと開けていく。ギイイィィ・・・とヒンジ部分から鈍い金属音がするが、なるべく音を立てないように気を付けた。。
ドアが半分くらい開く。滝田は荷台横から一歩、また一歩と運転席に近づいてくる。滝田がドアに手をかけた瞬間だった。
ガアアアアアアァァァァァァッッ!
熊は唐突に大きく吠えた。と同時に熊が突進をしてきた。
「うあああああああああああああああああああああ!」
私はその光景に慄き大きな悲鳴を上げた。
ドオオオオオン!
銃声だ。滝田すぐ横で撃ったことを私はすぐに理解した。が、熊は止まることなく滝田へ突進する。熊が運転席あたりに激しく衝突すると、半開き程度だったドアが大きな音を立ててしまり、激しく車体が揺れた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
滝田の悲鳴と熊の吠える声が入り混じって聞こえた。運転席側の窓から熊が激しく暴れるのが見える。しかし窓を覗いて様子を伺うことも滝田を助ける勇気もない。絶望の中で私は滝田の言葉を思い出し、助手席側のドアを閉めた。
そして私は目を強く瞑り、耳を塞いで身を屈めるしかなかった。塞いだ耳に微かに聞こえていた滝田の声は聞こえなくなり、熊の声も聞こえなくなった頃、私は運転席の窓から恐る恐る覗いてみることにした。
足元は血の海と化していた。が、滝田の姿はない。熊が出てきた茂みに向かって滝田を引きずったあとが残っていた。呆然とただその血のあとを私は眺めることしかできなかった。
それから私はトラックを運転し、人里へ下りた。事情を話し、警察へ捜索願いを出した。
警察、地元の猟友会の捜索の結果、見るも無残な状態の滝田が見つかった。滝田を襲った熊を駆除すべく猟友会が捜索したが、終ぞ見つけることはできなったそうだ。
滝田が生前世話になったという猟友会の方に言われた。
「熊を見たら逃げろと言っていたが、途中シカを撃ったのが間違いだったな。血の臭いにつられて君たちをつけてきたんだろう。滝田君の事は事故だ、気にしてはいけない。それに銃を持って山に入るってことは、そのような覚悟を持っていたはず。だから助けられなかったなんていう考えは傲慢でしかない。野生動物の前では人は皆、平等に無力なのだから」
私はこの言葉を、熊被害の報道を聞いて思い出す。
滝田を殺した熊が憎いかと問われれば、答えはNOだ。あの熊がとった行動は生存のための必然であり、熊被害で駆除する人間側の行動も必然と言える。だからこそ、私はあの熊を憎んでいないし、憎みもしない。ただ、一つ言えることは滝田がいなくなって寂しいということだ。私の唯一の親友はもう帰ってこない。
やぼなツッコミだけど、ヒグマを射殺できるようなライフルって所持許可が下りるまで10年かかったのでは?
狩猟免許取ってるような人なら散弾銃でヒグマが死ぬわけないって当然知ってるだろうし、最後のシーンも色々矛盾してるような
クマの問題はホント最近とくにひどいですよね。それに、ハンターたちの持つ銃ってほとんどが散弾銃でクマを殺せるライフルを持つのが本当に難しい。そのくせ熊被害が出たら国は猟友会任せ。猟友会は公共事業でやってるわけでもないのに全責任を負わされる。札幌で起きた事件なんて、警察の依頼で発砲したら、後から街中で発砲したのは違反だからって免許取り消しになってる。
だったら熊が出たら警察の狙撃隊か自衛隊でも出せばいいのに、それもしない。今のクマ被害はなんにもしない行政の責任ともいえる。
北海道にはイノシシはいない、というつっこみがありそうですが、wikiによると本州から連れて来たイノブタの養殖のために本州から持ち込まれた数頭の個体が逃げ出し、野生化しているそうです。
あと、1p目で石狩鍋を食べるシーンで「いたせりつくせり」って書いてますが、正しくは「至れり尽くせり」ですね。
上のコメント、書いてるうちに変な風になりました。すいませんw
>やぼなツッコミだけど、ヒグマを射殺できるようなライフルって所持許可が下りるまで10年かかったのでは?
狩猟免許取ってるような人なら散弾銃でヒグマが死ぬわけないって当然知ってるだろうし、最後のシーンも色々矛盾してるような
死ぬわけなくても威嚇のために撃ったと解釈できるけど。難癖つけたいだけのコメントはやめた方がいいですよ
状況が目に浮かび、最後は助かってと祈りながら読みました。
野生動物の前では人は皆平等に無力と言われたら考え深いです。
車に乗って逃げればいいのにw
創作だからしゃーないか
これって怖話の実体験版だから言うほど難癖でもなくてアチコチ間違ってるぞって話やん。
熊害の話はタイムリーですね。今年は特に被害がひどい
kamaです。今日、韓国語の怪談サイトでこちらのお話が取り上げられてましたね。名作の証拠。ところで韓国にもクマっているのかな??
↑いるみたいですよ。
投稿者の方のメッセージならまだしも難癖だとか言ってた人が、海外サイトの話を出してステマをやっちゃ駄目でしょう
12番さん、教えて下さい
5番さんのコメントもkamaさんなんですか?
いろいろな人のコメント欄でkamaさんの書き込みをよく見かけるけど、書く内容の都合によって名前を出したり出さなかったりしてるってことなのかな?
12番さんの言う韓国ステマ?のコメントは他の人のコメント欄でも見ました
kamaさん、これはステルスマーケティングなんですか?
そして、12番さんは何故5番さんをkamaさんだと認識しているのですか?
散弾銃で死なないったって重症でしょ?
その後人殺せる気概が残ってるんや。
クマって凄いな
↑↑kamaです。あんまりこーゆーのにかかわりあいたくないんですけど、
ボクも名前出すときもあるし書かないで勢いでコメントするときもありますが、
ここでボクだと指摘されている難癖つけたとかのコメントは他の人が書いたものでボクではありません。あしからず。韓国語サイトに載ったよって言うのだって、「よかったねー」って話で、なんでそれがステルスマーケティングなのか、ボクにはわかりません。ま、不毛ですから争いやめときましょう。それにしても、最近なんかおかしいですね。奇々怪々さん。
怪しいのでボクは新規投稿ストップさせていただいてます。
たぶんですけど、5番さんがKamaさんじゃありませんよ。
実体験を投稿してくれているのに、難癖付けるのはやめましょうよ。
読み終えてゾッとしてたらコメント欄が人間味溢れてて少しホッとしたわ
>狩猟免許取ってるような人なら散弾銃でヒグマが死ぬわけないって当然知ってるだろうし、最後のシーンも色々矛盾してるような
例えヒグマでも至近距離から顔面や急所に散弾を食らえば相当なダメージは与えられると思うし、ビックリして逃げる可能性だってあるでしょ。散弾銃じゃどうせ死なないし撃ちもせずに素直にやられようってなりますか?普通は撃つでしょうし、何が矛盾なのか全くわかりません。
作者です。
なんかコメント欄が凄いことになっていましたが、たくさんのコメントありがとうございました。
久々の受賞作品なので嬉しいです。
今月もよろしくお願いします。
>>ビックリして逃げる可能性だってあるでしょ。
>>散弾銃じゃどうせ死なないし撃ちもせずに素直にやられようってなりますか?
>>普通は撃つでしょうし、何が矛盾なのか全くわかりません。
ちなみにこれはないので注意。手負い熊をこしらえて大変な問題になるので。
熊は銃や火薬の臭いに警戒して飛び掛かるのを躊躇うので、銃口を向けながら猟師は後方に下がる。
しつこい様だけど創作だから問題ないのであって、これを実話として捉えてるコメント欄の人たちが問題なのが分かってない。作者さんじゃなくて変な擁護してたこういう人が問題なんです。
私が次に滝田に会ったのはそれから10年以上が経ってからだった。夏も終わりを迎えた頃、滝田から〜
11年ぶりに会う滝田は、都内でバリバリ働いていたスタイリッシュな姿は身を潜め〜
コメ欄を元に修正するとこうなるのね。そんなに違和感ないし雑誌とかだと編集の方で直していくのでしょう。
ググったけどライフルは、やっぱり10年以上必要で短縮の可能性はあるけど有害駆除の時だけなので狩猟で使ったら当然アウト。
エピローグで滝田は、銃器の違法使用により被疑者死亡で書類送検されてしまったとかなら辻褄も合うから作者さんには、オチ的な続編も書いてほしいかも?
想像力が豊かな方の変な言いがかりが多いけど、本文のなかでライフルなんて記述は一切ないですよね。
「だから助けられなかったなんていう考えは傲慢でしかない。野生動物の前では人は皆、平等に無力なのだから」
最大のメッセージはこれじゃよ
幽霊よりもこえー
コメ欄の場外乱闘がこえー