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kanaさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

【赤騎士事件】-事件記者 朽屋 瑠子-
長編 2023/09/03 23:07 34,306view
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「久しぶりっすね。朽屋さんが呼んでくれるなんて珍しいから飛んで来ちゃいましたよ。
とんでとんで~なんつってw」

「wいいから、説明するわよ」朽屋は現在状況と今後の作戦を説明した。

「じゃあ一度現場を見てきます」そう言って一人で階段を降りていく忍足。

数分後、青い顔をして戻って来た。
「いや朽屋さん~アレはちょっとヤバイっすよ。なんすかあの赤い馬。蹄に沿ってナイフ付いてるし、肉食じゃないですか!もう完全やる気まんまんの目してましたよ!」

「だからいいのよ。こっちから追わなくても向こうから来てくれるじゃない?」

「ま、まぁそうですけど・・・とりあえずボクの力じゃあの馬は倒せませんから、朽屋さんよろしく~」

「あ、あとね、日本刀あるから渡しておくね」 組長から預かった日本刀を忍足に渡す。

「へぇ~これはなかなかの名刀じゃないっすか!組織にもこんなのなかなか無いですよ」

「ここの組長があずきバーとかなんとか言ってたわ。たぶんすごく固いのね」

「あずきって・・・小豆長光じゃないですかぁぁ!! かの上杉謙信公の愛刀で、現在行方不明となっている幻の名刀・・・まさかこんなところにあったなんて・・・」

「ニンニンお似合いよ。私はこのウェザビーを使うわ。九郎君からお借りしました」

「あっ、どうも九郎です」「ああーどうどうもニンニンって呼んでくださいwなんつって」

「彼、これでもプロの殺し屋だからね。舐めてると殺されるわよ」

「いや、そんな、姐さん、ボクは仕事でやってるだけで、殺人狂じゃありませんから」

突然地下から、ガーン、ガーンと衝撃音がする。鉄扉を蹴破ろうとしている音だ。

「いよいよ、始まった。行くわよ」

階段入り口真正面に立つ朽屋。体を少し斜めにして立ち、自分の身体でウェザビーを隠すようにしている。そのうち、ガンガンとひときわ大きく衝撃音が響き渡り、鉄扉が破壊されたことがわかる。そこから馬のいななきとも、肉食獣の咆哮ともとれるような叫び声を上げながら、まるで戦車が階段を駆け上がっているかのような音が上の階に迫ってくる。

朽屋は上から階段の踊り場を見ていた。

音が一旦静まり返ったかと思うと、赤い馬の首だけがにゅうっと踊り場に出た。
朽屋と目が合う。それは優しい馬の目などではない。丸く大きく見開かれ、狂気に満ちた視線を朽屋に向けた。そして朽屋を確認すると、鼻息も荒く、再び動き出した。

踊り場でその赤く巨大な馬体をさらすと、そのまま力任せに階段を駆け上がって来る。朽屋はそこではじめて隠していたウェザビーを構え、一瞬にして心臓に狙いを定めて撃った。
轟く銃声、雷鳴のような光。撃たれた瞬間、赤い馬からは四方に血しぶきが飛び散った。
かと思うと、今度は激しい勢いで心臓から血が噴出し、それが朽屋の全身に浴びせられた。

返り血で血まみれになりながら、朽屋はまだ銃口を赤い馬に向けている。
もんどり打って背中から踊り場に転げ落ちる赤い馬。
まだ激しく足を動かしているが、目には生気がない。息絶えるのは時間の問題だ。

「ふ~っ」やっと一息ついて、排莢する朽屋。次弾を装填する。

「ひぇ~、相変わらずスゲぇな。あの巨体が良く一発で止まったな」

9/19
コメント(10)
  • kamaです。朽屋瑠子シリーズ第11作目は、対バルベリト戦です。
    今回は登場人物も多いですが、個性ある人たちが多いので好きになっていただけたらいいなーと思います。尚、ネタバレですが、文中8pでヤクザの事務所が「渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5」となっていますが、これはもちろん架空の住所で、知ってる人は知っていると思うのですが、1992年に公開されたウッチャンナンチャンの主演映画「七人のオタク-カルトセブン-」で、主人公の南原さんが無線オタクをつかまえるための罠として流し続けた謎の暗号「・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・」というのが元となっております。今回のお話では渋谷区を舞台にしたかったためです。ラストも朽屋がキルビルやってる姿を想像しなから読まれると、楽しさ倍増かと思います。ロマンホラーということで、お楽しみください。

    2023/09/03/23:24
  • 面白かったです。一気に読みました。

    2023/09/04/11:43
  • 今回も面白かったです
    このサイトの他の作者の作品も、朽屋瑠子にかかれば全てハッピーエンドになるのに!

    2023/09/04/13:01
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。19ページもあるのに一気読みしていただいてありがとうございます。感謝!!
    個人的に朽屋瑠子シリーズをおもしろいと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分で読んでて一番おもしろい作品ですからw
    今朝も会社に行く前に「どこか間違いはないかな~と読んでたら、途中からおもしろくなってきて止まらなくなり、あやうく遅刻するとこでした。フ~アブナイ~~

    2023/09/04/18:37
  • 瑠子シリーズ今回もドキドキしながらも楽しく読ませて戴きました。九郎ちゃんと瑠子のバディ、今後が楽しみです。

    2023/09/05/02:22
  • 読んでいるうちに目が冴えてしまい寝不足です。
    今回のも面白かったですよ。
    でも、組長が死ぬなんて?

    2023/09/05/11:04
  • 気になるのは九郎が朽屋の体を拭いてるときに赤ちゃんみたいって笑うとこがあるんですが、えっ、朽屋の体にベビーなところがあるってことですか?!

    2023/09/05/12:42
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。
    ドキドキしながらみていただいて、本当に感謝です。
    寝不足にして、スイマセン!楽しんでいただければ本望です。
    朽屋の裸で赤ちゃんみたいなところ・・・たぶん、肌ですかね?わかりませんが。
    ・・・組長と桐原が死ぬのは、実は僕も葛藤がありました。なにも殺さなくてもいいんじゃないかと。逆にここでニンニンを死なせてしまおうかなとも思っていました。
    でも、ニンニンが死ぬと呼び出した朽屋の責任問題にも発展しそうだし、明るく終われない気がしたのでニンニンは生かしました。組長と桐原さんももったいなかったですが、彼らはやはりヤクザですから、極道には極道の道があります。死んで花実が咲くというか。実際彼らは作品内で人殺しをしたと語っていますから、作品を読んだ人の中には人を殺したやつがなぜ生きながらえているのかと反社に対して嫌悪感を抱く方もいると思います。だからこのような結末が似合いだったのかな、と思います。問題は九郎ですね。彼(彼女)は本編内で5人殺してると言ってます。なのに最後は明るく朽屋と仲間になりそうな雰囲気ですが・・・果たして殺人を犯しているキャラが普通に受け入れられるのか・・・というのは非常に難しい部分もあると思います。ボクの作品の作り方からすると・・・九郎も組長と同じようにどこかで死ぬ運命にあるのか・・・あるいはこの呪縛を説くために、九郎は実は殺しなんかやってなかったという設定を用意するか? 子供時代からの洗脳で心神喪失状態だった?
    さてどうなるでしょうか。本文内では自分の死をいとわない行動が目に付く九郎ですから、これから先も死線に最も近いキャラとして登場していくかもしれないですねぇ。・・・先の事は判りませんね。

    2023/09/05/19:03
  • これを初めて読んだんですけど面白かったです!
    他のも見てきますw

    2025/05/09/08:50
  • 文体が面白いだけでなく、作者の深い知識に感心させられる。

    アクションの表現もいいので一気に読んでしまう。

    シリーズの他の作品も急いで読みたいし、今後も追いたいと思った。

    2025/06/28/14:55

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