「姐さん、全身血まみれですよ。あとでボクの部屋のシャワー使ってください」
九郎が心配して声をかける。
「ふぅ~。もうね、熱湯をかけられたみたいに熱いわ、この血」
九郎が馬の遺体に向かってトカレフを数回撃ち込む。反応はない。完全に沈黙している。
「降りるわよ」朽屋に従って階下へ降りる忍足と九郎。
壊れた扉の向こうに室内が見える。巨大な薔薇の花から何本もの触手が伸び、すでに鉄格子は破壊されていた。
シュルシュルと音を出し、棘のムチが襲い掛かってくる。
「フン」今度は日本刀を持つ忍足が前に出て、棘のムチを切り落としていく。
「抜群の切れ味。・・・もったいない」
朽屋はその後方で射撃姿勢に入り、薔薇の花の中心を狙う。
「ニンニン、撃つわよ。下がって」
「ハイ」さっと身を引く忍足。だがそれを追うようにまた棘のムチが伸びる。
再び朽屋のライフルから閃光が走り、銃声が轟く。その瞬間、薔薇は青く燃えだした。
温度の無い冷たい炎が、壁全体を走る薔薇の蔦を焼いて行く。
2体の魔物を倒し、ベッドで横になっている青年に向かう3人。
「うん?・・・これは・・・」忍足が青年の左手の甲に何かを見つける。
そこには円の中に不思議な文様が描かれた刻印があり、周囲には『BERITH』とあった。
「ベ・リ・ト・・・悪魔バルベリトのシジル刻印だ・・・」
「ベリト?」朽屋が聞き返す。
「朽屋さんの背中にあるのと似たようなものかな? バルベリトはベールゼブブ配下の中でも強力な悪魔だよ。今倒した赤い馬と薔薇の魔物はバルベリトの使い魔みたいなもので、この刻印から発せられる魔力によって作られた人工精霊ともいうべきもの。・・・だからここにはバルベリト本体はいないことになる」
「そうなの?・・・じゃあこの青年は悪魔に憑りつかれてたわけじゃないのね?」
「えぇ、この悪魔の刻印のせいで精神が耐えられなくなっていたんでしょう。こんなのつけて平気なのは朽屋さんくらいですよ、ホントに」
「で、どうするのコレ。剥がせたりするのこの刻印」
「いえ、剥がせるんなら朽屋さんの背中からもとっくに剥がしてますから・・・手首ごと切り落としましょう」
「えっ!」動揺する九郎。「彼の手首を落とすの? そんな・・・」
「九郎君、仕方ないわよ。この方法しかないみたいだもの」
忍足が割って入る。
「じゃ、私が切り落としますから、手首は朽屋さんの魔弾で消滅させてください」
「了解」

























kamaです。朽屋瑠子シリーズ第11作目は、対バルベリト戦です。
今回は登場人物も多いですが、個性ある人たちが多いので好きになっていただけたらいいなーと思います。尚、ネタバレですが、文中8pでヤクザの事務所が「渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5」となっていますが、これはもちろん架空の住所で、知ってる人は知っていると思うのですが、1992年に公開されたウッチャンナンチャンの主演映画「七人のオタク-カルトセブン-」で、主人公の南原さんが無線オタクをつかまえるための罠として流し続けた謎の暗号「・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・」というのが元となっております。今回のお話では渋谷区を舞台にしたかったためです。ラストも朽屋がキルビルやってる姿を想像しなから読まれると、楽しさ倍増かと思います。ロマンホラーということで、お楽しみください。
面白かったです。一気に読みました。
今回も面白かったです
このサイトの他の作者の作品も、朽屋瑠子にかかれば全てハッピーエンドになるのに!
↑kamaです。コメントありがとうございます。19ページもあるのに一気読みしていただいてありがとうございます。感謝!!
個人的に朽屋瑠子シリーズをおもしろいと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分で読んでて一番おもしろい作品ですからw
今朝も会社に行く前に「どこか間違いはないかな~と読んでたら、途中からおもしろくなってきて止まらなくなり、あやうく遅刻するとこでした。フ~アブナイ~~
瑠子シリーズ今回もドキドキしながらも楽しく読ませて戴きました。九郎ちゃんと瑠子のバディ、今後が楽しみです。
読んでいるうちに目が冴えてしまい寝不足です。
今回のも面白かったですよ。
でも、組長が死ぬなんて?
気になるのは九郎が朽屋の体を拭いてるときに赤ちゃんみたいって笑うとこがあるんですが、えっ、朽屋の体にベビーなところがあるってことですか?!
↑kamaです。コメントありがとうございます。
ドキドキしながらみていただいて、本当に感謝です。
寝不足にして、スイマセン!楽しんでいただければ本望です。
朽屋の裸で赤ちゃんみたいなところ・・・たぶん、肌ですかね?わかりませんが。
・・・組長と桐原が死ぬのは、実は僕も葛藤がありました。なにも殺さなくてもいいんじゃないかと。逆にここでニンニンを死なせてしまおうかなとも思っていました。
でも、ニンニンが死ぬと呼び出した朽屋の責任問題にも発展しそうだし、明るく終われない気がしたのでニンニンは生かしました。組長と桐原さんももったいなかったですが、彼らはやはりヤクザですから、極道には極道の道があります。死んで花実が咲くというか。実際彼らは作品内で人殺しをしたと語っていますから、作品を読んだ人の中には人を殺したやつがなぜ生きながらえているのかと反社に対して嫌悪感を抱く方もいると思います。だからこのような結末が似合いだったのかな、と思います。問題は九郎ですね。彼(彼女)は本編内で5人殺してると言ってます。なのに最後は明るく朽屋と仲間になりそうな雰囲気ですが・・・果たして殺人を犯しているキャラが普通に受け入れられるのか・・・というのは非常に難しい部分もあると思います。ボクの作品の作り方からすると・・・九郎も組長と同じようにどこかで死ぬ運命にあるのか・・・あるいはこの呪縛を説くために、九郎は実は殺しなんかやってなかったという設定を用意するか? 子供時代からの洗脳で心神喪失状態だった?
さてどうなるでしょうか。本文内では自分の死をいとわない行動が目に付く九郎ですから、これから先も死線に最も近いキャラとして登場していくかもしれないですねぇ。・・・先の事は判りませんね。
これを初めて読んだんですけど面白かったです!
他のも見てきますw
文体が面白いだけでなく、作者の深い知識に感心させられる。
アクションの表現もいいので一気に読んでしまう。
シリーズの他の作品も急いで読みたいし、今後も追いたいと思った。