「へぇ・・・かわいいお子さん時代だ・・・」
「そんなことより・・・組長のお孫さん、若はどこであんなもの拾って来たのよ。ニンニンの話だとかなり高位の悪魔らしいじゃない。そんなのとどうやって契約したのかしら」
「それはボクのせいだよ、きっと・・・」
天井を見て話す九郎。それをだまって見つめる朽屋。
「ボクの家は両親とも殺し屋でね、ボクも幼い頃から殺しの訓練を受けてきたんだ。
そのうち両親は悪魔崇拝にのめり込むようになって、組からの依頼だけじゃなく、悪魔に生贄を捧げるために人を殺しはじめていたんだ」
ボクと若とは相性が良くて、組んで仕事をするうちに親友になっていったんだ・・・
そしてある日、5人目の抹殺に成功したボクを、両親は悪魔の生贄にしようとしたんだ」
「・・・蟲毒の手法と同じことを人間でしようと・・・それで高位の悪魔と契約した?」
「両親は木の杭を持ってきて、ボクの心臓に突き立てようとしていたんだ。
・・・ボクも抵抗する気はなくて・・・だって、もう死んでもいいかなって思ってたし」
九郎の目に涙が溜まってきて、一筋流れた。1滴だけ、枕を濡らす涙。
「その時、若が助けに来てくれて、撃ち合いになって・・・結局ボクの両親を若が倒してくれて、そのおかげでボクは助かったんだけど・・・」
「なるほどね。本当は九郎を犠牲にして悪魔との契約を得ようとしていた儀式中に、若が介入して両親を倒した結果、若が刻印を受け取る資格を得てしまったんだ・・・図らずも」
「・・・その日から若はだんだんおかしくなっていったんだ」
「そうか・・・」朽屋は九郎が可愛そうに思い、いつのまにか頭をなでていた。
「だけど、今日は最高だったよ。姐さんのおかげで若が助かったんだし。ボクはこれからも若の側にいるよ。なくなった左手の代わりになる」
「そうかそうか。私としては九郎にはもうアブナイ橋は渡って欲しくないんだけど」
「ボク・・・朽屋姐さんのこと、どんどん好きになってきた! 若と同じくらい好き!
ねぇ、帰らないで!!お願い!!朽屋姐さんもこの組に入れてもらいなよ!姐さんならあっという間に幹部に昇格できるよ!」
「あはは・・・なんか今日はよくスカウトされる日ね!!」
「そうだ!姐さん、若と結婚しなよ!!そしたらボクは二人をずっと近くで守っていける」
(あはは・・・永久就職キター!!)「ダメ、ダメよそんな~」
「わぁぁぁぁん、ずっと一緒にいたいよぉ!!」突然子供のように朽屋の身体に抱きつき、大粒の涙を流して叫ぶ九郎。駄々っ子のようだ。
泣きつく九郎を見て朽屋は哀れに思っていた。おそらく本当の母親にさえこんな風に泣きじゃくったことなどないのだろう。今日の一連の出来事が、これまでクールに生きてきた九郎の感情を爆発させたのかもしれない。
朽屋は、しばらくそのまま九郎の気が済むまで泣かせてあげた。
「うぅ・・・ごめん姐さん、せっかく綺麗にしたのにボクのせいでまたびしょびしょになって・・・うわぁぁぁん」もう泣き止まない子供状態になってきた。『堰を切ったように』とはこの事なのだろう。厳格だと思われていた人が、一度崩れると一気に涙もろい人に変貌してしまうことはよくある。今の九郎がまさにそれ。正しい子供時代を過ごしてこなかった事を、ここで一気に取り戻そうとしているようにも見えた。
「九郎・・・じゃさ、一緒にシャワー浴びて、涙拭いて、それから下の様子見にイコか?
私が着れるお着替えとかある?」























kamaです。朽屋瑠子シリーズ第11作目は、対バルベリト戦です。
今回は登場人物も多いですが、個性ある人たちが多いので好きになっていただけたらいいなーと思います。尚、ネタバレですが、文中8pでヤクザの事務所が「渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5」となっていますが、これはもちろん架空の住所で、知ってる人は知っていると思うのですが、1992年に公開されたウッチャンナンチャンの主演映画「七人のオタク-カルトセブン-」で、主人公の南原さんが無線オタクをつかまえるための罠として流し続けた謎の暗号「・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・」というのが元となっております。今回のお話では渋谷区を舞台にしたかったためです。ラストも朽屋がキルビルやってる姿を想像しなから読まれると、楽しさ倍増かと思います。ロマンホラーということで、お楽しみください。
面白かったです。一気に読みました。
今回も面白かったです
このサイトの他の作者の作品も、朽屋瑠子にかかれば全てハッピーエンドになるのに!
↑kamaです。コメントありがとうございます。19ページもあるのに一気読みしていただいてありがとうございます。感謝!!
個人的に朽屋瑠子シリーズをおもしろいと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分で読んでて一番おもしろい作品ですからw
今朝も会社に行く前に「どこか間違いはないかな~と読んでたら、途中からおもしろくなってきて止まらなくなり、あやうく遅刻するとこでした。フ~アブナイ~~
瑠子シリーズ今回もドキドキしながらも楽しく読ませて戴きました。九郎ちゃんと瑠子のバディ、今後が楽しみです。
読んでいるうちに目が冴えてしまい寝不足です。
今回のも面白かったですよ。
でも、組長が死ぬなんて?
気になるのは九郎が朽屋の体を拭いてるときに赤ちゃんみたいって笑うとこがあるんですが、えっ、朽屋の体にベビーなところがあるってことですか?!
↑kamaです。コメントありがとうございます。
ドキドキしながらみていただいて、本当に感謝です。
寝不足にして、スイマセン!楽しんでいただければ本望です。
朽屋の裸で赤ちゃんみたいなところ・・・たぶん、肌ですかね?わかりませんが。
・・・組長と桐原が死ぬのは、実は僕も葛藤がありました。なにも殺さなくてもいいんじゃないかと。逆にここでニンニンを死なせてしまおうかなとも思っていました。
でも、ニンニンが死ぬと呼び出した朽屋の責任問題にも発展しそうだし、明るく終われない気がしたのでニンニンは生かしました。組長と桐原さんももったいなかったですが、彼らはやはりヤクザですから、極道には極道の道があります。死んで花実が咲くというか。実際彼らは作品内で人殺しをしたと語っていますから、作品を読んだ人の中には人を殺したやつがなぜ生きながらえているのかと反社に対して嫌悪感を抱く方もいると思います。だからこのような結末が似合いだったのかな、と思います。問題は九郎ですね。彼(彼女)は本編内で5人殺してると言ってます。なのに最後は明るく朽屋と仲間になりそうな雰囲気ですが・・・果たして殺人を犯しているキャラが普通に受け入れられるのか・・・というのは非常に難しい部分もあると思います。ボクの作品の作り方からすると・・・九郎も組長と同じようにどこかで死ぬ運命にあるのか・・・あるいはこの呪縛を説くために、九郎は実は殺しなんかやってなかったという設定を用意するか? 子供時代からの洗脳で心神喪失状態だった?
さてどうなるでしょうか。本文内では自分の死をいとわない行動が目に付く九郎ですから、これから先も死線に最も近いキャラとして登場していくかもしれないですねぇ。・・・先の事は判りませんね。
これを初めて読んだんですけど面白かったです!
他のも見てきますw
文体が面白いだけでなく、作者の深い知識に感心させられる。
アクションの表現もいいので一気に読んでしまう。
シリーズの他の作品も急いで読みたいし、今後も追いたいと思った。