赤い馬はまだ形をとどめていたが、徐々にドロドロと溶けていくようだった。
・・・・・・
忍足が出て行ったあと、眠っている朽屋の服を脱がせはじめる九郎。
洗面器にお湯を張ってそれで朽屋の身体の血糊を拭いて行く。
どこをどう拭こうがまったく起きる気配がない。
何度も洗面器の湯を変えて朽屋の身体を拭いて行く。
「ぷふっ」思わず笑いが込み上げてくる九郎。
「赤ちゃんの世話してるみたい。3発撃ったら寝ちゃうなんて、姐さん最大の弱点だね」
そう言いながら、裸の朽屋をうつぶせにして背中を拭こうとする。
「すごいな・・・なにこれカッコイイ紋々入ってるじゃん姐さん・・・さっきニンニンさんが話してたやつかな・・・若の左手にあったのと同じやつって・・・」
朽屋の背中には、ルキフェル・アスタロト・ベールゼブブの最凶悪魔たちの紋章が逆十字になって刻印されている。そしてそれらを3本の足で掴むようにして羽を広げるカラスが描かれていた。朽屋の肩幅いっぱいくらいに黒い羽根が広がっている。
「カラスは二本足やろ・・・絵心ない彫師やな」そう言いながら全身くまなく拭いて行く。
「それにしてもホントに気持ちよさそうにぐっすり眠ってるね。なんだかボクも少し眠くなってきた・・・一緒に寝ようかな・・・」
九郎もジャージを脱ぎ捨て、全裸になって朽屋の横で寝ることにした。
なぜかわからないが、とてつもない安心感が湧き上がってくるのを感じる九郎。
(これ・・・ご主人様の側で丸くなってる猫の気持ちかもしれん・・・姐さん・・・)
・・・・・・
数十分なのか、数時間なのか、朽屋はやっと目を覚ました。
詳細は省くが、すっぽんぽんの朽屋が同じくすっぽんぽんで同性だった九郎を見た時の反応は驚天動地の混乱を朽屋に与えたのは言うまでもない。(弟だったらかわいい)と思っていた少年が実はかわいい妹だったのだから。
しばしベッドに横になりながらピロートーク(?)をする二人。
「うう・・・いろいろありがと・・・でも、私のカラダ・・・全部見たの?」
「見ました。姐さんのすべて、秘密・・・」
「うわ~ん」顔を真っ赤にして手で覆い隠す朽屋。
「まさか背中にカラスのイレズミしてるとは」
「そっちかい!」
「若の手の甲にもあったこのマークってなんなんですか?」
「うーん、話すと長くなるけど、要は悪魔と契約してその力を行使するための刻印ね。
私の場合は、あなたよりもっと若い頃に、別の悪魔に与えられそうになってたのを横から奪い取ったんだけどね。背中の・・・このカラスのカ―君が守ってくれたみたいなものね」
「へぇ、カー君・・・イレズミのカラスに名前つけてんだ・・・かわいい」
「いや、その・・・私が物心ついたときから、いつも一緒にいた3本足のカラスがいてね。その子がカー君だったのよ。おじいちゃんはヤタガラスだって言うんだけど、当時それがなんなのかよくわからなくてね、アニメに出てくるヤッターペリカンとかヤッターアンコウとか、それの仲間かな?って思ってたんだよね・・・」

























kamaです。朽屋瑠子シリーズ第11作目は、対バルベリト戦です。
今回は登場人物も多いですが、個性ある人たちが多いので好きになっていただけたらいいなーと思います。尚、ネタバレですが、文中8pでヤクザの事務所が「渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5」となっていますが、これはもちろん架空の住所で、知ってる人は知っていると思うのですが、1992年に公開されたウッチャンナンチャンの主演映画「七人のオタク-カルトセブン-」で、主人公の南原さんが無線オタクをつかまえるための罠として流し続けた謎の暗号「・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・」というのが元となっております。今回のお話では渋谷区を舞台にしたかったためです。ラストも朽屋がキルビルやってる姿を想像しなから読まれると、楽しさ倍増かと思います。ロマンホラーということで、お楽しみください。
面白かったです。一気に読みました。
今回も面白かったです
このサイトの他の作者の作品も、朽屋瑠子にかかれば全てハッピーエンドになるのに!
↑kamaです。コメントありがとうございます。19ページもあるのに一気読みしていただいてありがとうございます。感謝!!
個人的に朽屋瑠子シリーズをおもしろいと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分で読んでて一番おもしろい作品ですからw
今朝も会社に行く前に「どこか間違いはないかな~と読んでたら、途中からおもしろくなってきて止まらなくなり、あやうく遅刻するとこでした。フ~アブナイ~~
瑠子シリーズ今回もドキドキしながらも楽しく読ませて戴きました。九郎ちゃんと瑠子のバディ、今後が楽しみです。
読んでいるうちに目が冴えてしまい寝不足です。
今回のも面白かったですよ。
でも、組長が死ぬなんて?
気になるのは九郎が朽屋の体を拭いてるときに赤ちゃんみたいって笑うとこがあるんですが、えっ、朽屋の体にベビーなところがあるってことですか?!
↑kamaです。コメントありがとうございます。
ドキドキしながらみていただいて、本当に感謝です。
寝不足にして、スイマセン!楽しんでいただければ本望です。
朽屋の裸で赤ちゃんみたいなところ・・・たぶん、肌ですかね?わかりませんが。
・・・組長と桐原が死ぬのは、実は僕も葛藤がありました。なにも殺さなくてもいいんじゃないかと。逆にここでニンニンを死なせてしまおうかなとも思っていました。
でも、ニンニンが死ぬと呼び出した朽屋の責任問題にも発展しそうだし、明るく終われない気がしたのでニンニンは生かしました。組長と桐原さんももったいなかったですが、彼らはやはりヤクザですから、極道には極道の道があります。死んで花実が咲くというか。実際彼らは作品内で人殺しをしたと語っていますから、作品を読んだ人の中には人を殺したやつがなぜ生きながらえているのかと反社に対して嫌悪感を抱く方もいると思います。だからこのような結末が似合いだったのかな、と思います。問題は九郎ですね。彼(彼女)は本編内で5人殺してると言ってます。なのに最後は明るく朽屋と仲間になりそうな雰囲気ですが・・・果たして殺人を犯しているキャラが普通に受け入れられるのか・・・というのは非常に難しい部分もあると思います。ボクの作品の作り方からすると・・・九郎も組長と同じようにどこかで死ぬ運命にあるのか・・・あるいはこの呪縛を説くために、九郎は実は殺しなんかやってなかったという設定を用意するか? 子供時代からの洗脳で心神喪失状態だった?
さてどうなるでしょうか。本文内では自分の死をいとわない行動が目に付く九郎ですから、これから先も死線に最も近いキャラとして登場していくかもしれないですねぇ。・・・先の事は判りませんね。
これを初めて読んだんですけど面白かったです!
他のも見てきますw
文体が面白いだけでなく、作者の深い知識に感心させられる。
アクションの表現もいいので一気に読んでしまう。
シリーズの他の作品も急いで読みたいし、今後も追いたいと思った。