まじない奇譚
投稿者:竹倉 (9)
「大丈夫よ。そろそろ職員さんがお茶を持ってきてくれる’’ハズ’’だから一緒に飲みましょう。」
「…えっ?」
ここにきて私の頭にひとつの疑惑がもたげたのです。
’‘それ’‘が正解なのかも、もちろん分かるはずはないし、’‘それ’’を確認するのが少し恐ろしくもありました。
それに、それに今回の面会の趣旨からして、ジャンルがかけ離れていましたから……
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「昭和20年に入ってから、私達が住んでいた東京の空で頻回にB29、グラマンが見られるようになったの。私は母と妹を残して長野県へ集団疎開に出たわ。」
そう言うとEさんは持参されていたポーチからあるものを取り出しました。
それは華やかな吉祥文様の生地を使用した枕型のお手玉が数個。
それなりに古びてはいるものの、とても綺麗な物であることは分かった。
程なくして施設のスタッフさんが
私達のテーブルにお茶を運んでくださり、私達は少しの休憩を挟んだ。
心なしかEさんの表情に影が差して見えたのは気の所為だったのだろうか?
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「このお手玉は疎開へ向かう時に母が私にくれた物なのよ。」
腕を伸ばし、私の手のひらにお手玉を乗せてくださるEさん。
お手玉は見た目に反して質量があったものでした。
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「このお手玉の中に何が入っているかわかるかしら?」
手に取ったお手玉を見つめる。
手触りから見るに、恐らく生米や大豆の類なのではないかな?
そうEさんに答えてみました。
「正解よ。このお手玉の中には、お米と大豆、そして小豆が入っているの。」
Eさんの話によれば、お母様は疎開に出向く我が娘が疎開先で餓えることがないように。空腹の時は周りに見つからず、こっそりとお手玉の中身を食べなさい・・ということであったそうです。
ただしこれはEさんのお母様に限ったことではなく、我が子を送る母親は少なからず行っていた愛情の表現のようでした。
現代では考えられない、切実で崇高なその出来事に堰を切ったように涙が溢れ出てきました。
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怖い話、というよりも本当に素敵お話、情景描写で引き込まれました。また楽しみにしております。
とても、不思議。
時代背景とか、引き込まれる感じ。
久しぶりに、不思議で素敵な話しでした。
美しい。
とても素敵なお話でした。
わかりやすい話し方で、すぐEさんの世界観に引き込まれました。
唱えている呪文は密教のマントラですね。
真言宗のお寺の家系なのでしょうか。
世界観に引き込まれました。
この手の話はとっても興味あります。
そして見えない世界の大きさも
信じれますね。信じる人は救われます🙏
m.yより
おもすろい。
m.yより
って上のコメントで書いてる人、自分が有名人って勘違いしてておもろい
怖くないけど、好きです。
不思議な話は必ずしも怖いとは限らないのですね。当時中学生の書き手さんの行動力にも感服します。意図せずさわやかな気持ちになれました。
サムハラ?
サムハラ神社てのが岡山にあるな。サンスクリット系の言葉から来てるのかもな
オンマシリソワカとかは真言だからこと不思議でもない。
生まれ月によって守り御本尊があったり、そこ言葉があるし、地蔵様へもあるからよくあること。
気になるなら調べたらいい。
オカルトは知らんが昔の修行者や武術家なら当たり前の世界でもある。
五問銭は死線を越えるっつって四銭より上だから戦中はよくある願掛けだ。
カラス銭だったか。