私が小学生の頃の話です。
友人のAには、とある特技がありました。
それは通学路の近道を見つけるというものです。
学校では新しい近道を発見するたびに私に聞かせてくれました。
最初はただの裏道でした。
一本先の角を曲がるとか、信号を一つ避けるとか、まあ普通の話です。
けれど、しばらくするとAの言う近道は、だんだん変わっていきました。
「あそこの家の庭、突っ切ると早いんだよ」
「この塀、越えたら一気に近いよ」
だんだんエスカレートしていき、見つかったら確実に怒られるような道ばかり発見するようになりました。
しかしそのAがある時期から私に近道を発見したと言ってこなくなりました。
「もう近道探しはやめたの?」
そう聞くとAは、
「もう探さなくて大丈夫。一番早いルート見つけたんだ!」
どんな道なのか聞いたんですが、そこはなぜか教えてくれませんでした。
ある日の昼休み、Aが血相を変えて教室を飛び出しました。
体操服を忘れたらしく、今から急いで取りに帰るというのです。
Aの家を知っていた私は、距離的に昼休みの時間内では間に合わないと思い、止めようとしました。
しかしAは、
「大丈夫、近道使うから」
の一点張りで、強引に走って行ってしまいました。
結局、昼休みが終わっても彼は教室に戻ることはありませんでした。
最初は、ただの遅刻だと思っていました。
先生もそう判断したようで、特に大きな騒ぎにはなりませんでした。
けれど、下校の時間になってもAは現れません。
そのうち、先生たちの様子がおかしくなりました。
職員室に呼ばれる先生が増え、校内放送が流れ、私たちは教室で待つように言われました。
家に帰ると、今度は近所が騒がしくなっていました。
Aの両親や近所の大人たちが集まり、Aを探しているのだと母から聞かされました。
私の家はAの家と近かったため、私も一緒に探すことになりました。



























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