【悲しい灯 事件】-女子高生 朽屋 瑠子-
投稿者:kana (210)
だが、悪魔は指を左右に振った。
「チッチッチッ、あなた、間違ってますよ」
「えっ・・・?」
「あなたが死んだら、たとえ娘さんが生き返っても今度は娘さんが悲しむじゃないですか。あなたも生きて、娘さんも生き返って、はじめて幸せになれるんじゃないんですかね?」
その言葉を聞いてK氏は思わずボロボロと泣き崩れた。
確かに、それこそがK氏が神にも祈り、夢にまで見た世界だったからだ。
「よかった。判っていただけたようで・・・。私は、この能力を可哀そうなあなたのために捧げたい。どうぞ、我がネクロマンシーの秘術をお使いください・・・。娘さんと幸せになって、神とやらを見返してやろうじゃあないですか!」
「ありがとうございます、ビフロンスさん。それで私はどうすれば・・・」
ビフロンスはあたりを見回して、路上に落ちていた蝉の亡骸を見つけてきた。
「まずは簡単にネクロマンシーの術をご覧に入れましょう」
そう言うと近くの茂みに行き、10本の黒い指をヘビのように木々に伸ばし、あっという間に生きた蝉を3匹捕まえてきた。
そして捕まえた蝉の頭を一匹ずつ指で弾き飛ばした。
先ほど拾った蝉の亡骸を中心に小さな魔法陣が広がる。
その三方に、頭を飛ばした蝉を置いた。頭を飛ばされた蝉はまだ生きているようだった。
ビフロンスはなにか呪文のようなものを唱えだした。人間の言葉ではない不思議な旋律だ。
「おぉぉ!!」K氏は驚いて目を見張った。真ん中の死んでいた蝉が生き返って、飛んだのだ。
「い・・・生き返った!!」
「どうですか、すばらしいでしょう。神にはできない御業(みわざ)です」
ネクロマンシーの術に感激したK氏は、クルマの後部座席にビフロンスを乗せ、
クルマを走らせた。
先ほどネクロマンシーで生き返った蝉が、木にとまってクルマを見送っていた。
そこに仲間だと思った別の蝉が近寄って来た。
生き返った蝉は、突然自らの頭を二つに割いて、近寄って来た仲間をそれで丸かじりした。
そのようにして次から次と、近づく仲間たちを食っていった。
・・・・・・
ビフロンスはクルマの後部座席に座り、さらに独演会を開いていた。
自分も元々は人間だったこと。二つの顔を持って生まれたことで世間から迫害されたこと。
それでも親からは大切に育てられ、人を恨まなかったこと。
悪いのは自分にこのような運命を与えた神だと考えるようになったこと。
死者を生き返らせるネクロマンシーこそ、神の企てに反逆する技だと思い勉強したこと。
kamaです。朽屋瑠子第10作目は、VS 悪魔ビブロンス戦です。
今回はボクの作品の中でもとくに悲しく救われない話となっていた「悲しい灯(ともしび)」の解決編ともなっています。そちらも併せて読まれると、世界観が広がると思います。
お盆休みの暇な時間のお供に、ぜひどうぞ。
kamaです。誤字脱字などいくつか修正しております。もし見つけた方はお知らせください。よろしくお願いします。
いい話だ。
ただ、ちょっと長いで( ´∀`)。
いつも楽しく読ませて頂いております
クッチャルコ新作、待ってました!
心温まる話でハッピーエンド、いいストーリーでとても良かったです
次回作も期待してます
↑kamaです。コメントありがとうございます。ちっょと長いですが、これでもがんばって半分の長さにしました。半分って、すごい削除量でしょw
怖くは無かったけれど面白かったです。
怖いというか、詐欺師ってこうやってだましていくのかという別の怖さがあった。
陽菜ちゃんと同い年の中学生くらいの子たちに読んでほしい気がする
↑kamaです。コメントありがとうございます。
楽しんでいただけて何よりです。朽屋瑠子シリーズはボクが一番楽しんでいるので、同じ目線で見てくれている読者様にはとくに感謝いたします。残念ながら今回出番がかなり短いですけど、これも半分に削ったためですね。削る前のオリジナルでは朽屋が赤ちゃん言葉を使うシーンと、仲間にパンツ見られるシーンもありました。(どんどん怪談から遠くなるので削除)
・・・またいつか別の機会に。
一同に会するじゃなくて一堂だと思います
↑kamaです。ありがとうございます。修正させていただきました。本当に助かります。またなにかありましたらご指示よろしくお願いします。